どたばたガシャンぐるぐる、擬音ばっかり頭の中に響きながらわたしは荒く自転車を止めてまだ追いつかない頭を抑えて籠の中に入った瓶を三つ抱えた、無用心にもあけっぱのドアを足を滑り込ませそのまま蹴って中に入れば外より幾分か温かい空気に触れる、瓶を棚において靴をそのままに廊下に座ればトントン音がして曲がったまんまの腰から首をぐるんと折り曲げるように自分の背中に後頭をくっつけた、見えたのは欠伸をする制服姿のリョーマがいた
「持ってきましたよー、牛乳三本」
「ごくろーさま」
「・・・もっと感謝こめろよばかリョーマ」
「何か言った?」
「いひゃ、ひこえてんじゃんか!」
ぐにいっ、細い指先がわたしの頬を容赦なくつまむ、これが地味にいたくって、ついにギブ!と声をあげればばちんと音がしてやっと解放された頬は真っ赤に腫れていた、朝型から布団を抜け出してすっかり冷たくなった手の甲を宛がえばそれに気づいたリョーマが寝癖を片手にわたしの手に人差し指だけ触れた
「つめた、」
「誰のせいだと思ってるんですかー、リョーマが牛乳毎朝持って来いとか言うから冷え症になったんだよ」
「へえ」
「うわ、興味なさそう!」
「そう、じゃなくて興味ないし」
「責任とれ!ちびっ子!」
「・・・」
「いたっ!」
今度はべしいっと無言で頭を叩かれた、これが結構いたくって、隣で牛乳をぐびぐび飲むリョーマを睨んでやる、そうしたら三本一気に空になった瓶をそのままにリョーマはそこらにおいてあったテニスバックを背負ってわたしに向いた
「ほら、行くよ学校」
「はいはいー」
「ん、」
「・・・え、なに」
「手、だしなよ」
「手?」
冷たくて赤くなった手をリョーマの前に出せばそれをわたしに近い手でとってきゅう、包むように手を繋いだ、そのままぐいっと引っ張られてわたしは無理矢理立たされずおえない
「な、なんで、手」
「責任、とれって言ったでしょ」
「・・・え?」
「温めてあげるよ」
なにそれ、そう口を開く前にわたしの耳にこしょばしい感覚が走って嗅覚にはシャンプーの匂いが鼻を覆った、ぽかんと開いた口元のすぐ横に焦らすような柔らかいものがわたしを押さえて、気づいたその時にはリョーマはニヤリと生意気に笑っていた
「おはよう」
余裕な顔なリョーマが何だかきにくわなくて繋いだままの手をぎゅうとひきちぎるぐらいに締めてやる、い゛、っ思わない衝撃にリョーマは顔を歪ませて、そこでやっとわたしは笑うのだった
プラマイゼロの温度に漬かった牛乳瓶
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