ぎゅう、まだ埃一つついていないスーツの袖を誰かが掴んだ


「ねえ、君」
「は、い?」
「僕と心中しない」
「・・・へ」


あまりにも突然でわたしはとにかく自分を捨てるように頭だけを孤立させた、わたしは只久々の休みに食事をとってアジトでのんびりしていただけなのに、あの鬼の獄寺さんにガミガミ言われない今日は特別で、なのに何故か捕まれた腕はわたしの最期を示してる様に見えた、口から胃が出てきそうな気分、当たり前にそんな事はありやしないけれど


「あ、あの」
「なに」
「まず貴方は、誰でしょう、か」
「・・・君僕を知らないの」
「え、ごめんなさい?」
「別にいいよ、其より、」


まだ彼は物騒なことを口にした、その度に逃げる選択肢をなくしている腕へ与えられる力は比例していって骨がみしみし悲鳴をあげている、でも、別に怖くはなくて寧ろ不思議で仕方なかったわたしはその捕まれた指に人指し指をくっつけて
彼は少しも顔を歪ませたりしなかったけど確にわかったのは脈が早くなったこと

「あの、わたし馬鹿なので心中とかイマイチよく分からないんですけど、でも」
「・・・」
「貴方は今、たぶんひとりが怖い、んですよね」
「・・・」
「なら、わたしなんかでよければ一緒にいますよ」


ぽす、子どもをあやすみたいに彼の頭に手をのっけた、ただ真っ黒だったから表情はうまく伺えないけど何も言わないのならば大丈夫かな
赤の他人にわたしがこんなことする義務なんてないかもしれない、でも彼がこのアジトにいるってことは少なくともわたしに関わりがあるひとで、何と無く彼がただ単に錆しかってる子供みたいだったから、そう理由をつけておこう
なんて自己満足をしていたら確に頭に乗っけていた腕はいつのまにか彼にまたもや捕られていてその上なにかを持ち上げるように、脈を上げられてわたしは反射的にパンプスの爪先を床につけた


「君、本当に馬鹿だね」
「え、なんですか・・・とったどー!ですか」
「馬鹿にも程があるね」
「す、すいませんなんかギリギリいってるんです、が!」
「僕が一人が怖い?笑えない冗談はよしてくれよ」
「へ、」
「でも、君が言った言葉には責任をとってもらう義務がある」
「ひ、え」


ぎゅむう、お日様のにおいがするスーツにわたしは顔面を押し付ける、否押し付けられた、少しかたいそこに目を瞑れば肩先に肌がすれてわたしは目をゆっくり開いた



「、あの・・・」
「・・・」
「苦・・・し、」
「・・・」


最後までいえなかったのは息苦しかった訳じゃなくただわたしの喉奥に言葉がつっかえたからで、彼はただ死んだように黙ったままだった
トクトク一定のリズムでわたしの耳元に囁くことば以外は



頭脳心中



みず知らずの人だから出来るんだけど、でもその後に関わりをもつのが僕らだろう、と



「でもなんであの時あんなこと言ったんですか?」
「ん・・・冗談、かな」
「、はあ!?」
「ある本を読んでね、影響って言うの?」
「・・・」


ある本と言うのは集/英社ではつばいちゅうitigo/doumei
(0725)
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