ぐらぐら
いつもならば確かにきこえる教室特有のざわめきや先生のうるさい声もきこえやしない、不安定な頭を押さえたままシャーペンをくるくる上手にまわしたままわたしの視界はそこから動く事はなくて、でもさっきの女の子特有の甲高いソプラノを思い出す度にじわじわ熱くなる頬に嫌気がさした
「白石くんってなまえのこと好きらしーんやて!」自信満々とばかりに友達がいっていた言葉は、あまりにもわたしを狂わせる、いやべつにそれが困るとかじゃなくて、だって、わたしも蔵のことが好きだから、半信半疑のそんなことに惑わされて何になる、っていう訳だけどでもちょっと、きになって
どうしようもなくわたしはそんなことを気にしては顔をあかくして隣の席で数学をやってる謙也にも「真っ赤やなあ」とケラケラ笑われる始末、謙也に笑われるあたりわたしも落ちたものだと思った!


「なまえどうかしたん?」


ガタンッ、びっくりしすぎてわたしは思い切り机と椅子をゆらしてあやゆく椅子から落ちるとこだった、なぜならわたしの机に手をかけて心配そうにしゃがんで顔をうかがう蔵がいた訳で、授業はとっくのとうにおわってたらしい、心拍数は常に上昇していく、やばい死ぬんやないか!


「うわっ、大丈夫なん?顔真っ赤やで」
「だ、大丈夫、やない」
「ほな保健室に」
「い、いや!そこまでちゃう、から!大丈夫!」
「・・・」


いっぱいいっぱいに否定すれば蔵はじろりとまんまるい瞳にわたしだけを映すように視線を寄せた、何気のない行為にさえ今のわたしには毒で首をずらす、前髪に隠れたところからじわじわ冷や汗がでてきそうだ


「なあ、俺なんかなまえにしたん?」
「・・・え、や、」
「言うてや」
「・・・っ」


息がつまる、今ならば全力疾走でもして廊下に逃げれば落ち着くことができるのは知っていた、のに目が離してくれない、それにどうせにしても多分蔵はわたしから答をきくまではずっと追って来るに違いない、なら・・・、少し渇いた唇をゆっくり動かす


「友達が、蔵がわたしのこと、す、すすす好き、やって言ってて、噂で」
「・・・ほう、それでなまえは動揺してん」
「動揺っていうか・・・!」
「それ、本当やで」
「・・・は」
「俺なまえのこと好きやねん」


立ち上がって首筋に片手をまわした蔵はどこか余裕のない表情で、自分よりもそちらを気にしてしまった、知ってしまったら終わりかと思っていたのに、でもどうしようもなく心臓をわしづかみにされたわたしは、椅子を蹴って間を挟む机なんて気にせず蔵に頭からどつくように抱き着いた


「う、わっ!」
「・・・」
「なまえ?」
「これが、答や」
「答・・・て」
「恥ずかしくてしにそうやねん!」
「そうやなあ」


ぽんぽん頭を優しい掌でたたく蔵はきっとはにかんで笑ってるんやろなあ、なんて考えたら一層顔があつくなる、もう体中がほてってしまってふやけてしまいそう、そう思った蔵の腕の中、いやに現実を見ざらる終えない状況に立つ


「でもなあ、なまえ」
「・・・なんや?」
「ここ、教室やで」
「!!!」



君しか見えない少年少女



蔵から離れれば顔を真っ赤にした女子にヒューヒューうるさい男子が教室を包んでいた



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