「手術中ね、なまえの声が頭に響いたんだ」


退院おめでとう、と言う前に決定的とばかり幸村がわたしを何てこともなく目で捕らえてそう可笑しくなく幸村はふふふと中性的な顔を緩ませる、わたしといえば「は」と口をまーるく開けて機関停止状態だ
何だろうこの違和感、と考える前にわたしは答を知っていた、わたしそんなに幸村と仲良かった・・・?え、いや悪かった訳じゃないしクラスメイトとしては結局良かったほうだとわたしは思うが、お見舞いにそんな沢山行った訳もなく(プリントをテニス部に届けたことはあるけど)大事な手術中にわたしがでる程そんなに幸村にとっておおきな存在になったことは無いと思う、真田さんの方が全然存在も、・・・威圧もあるとおもった


「それでね、頑張ろうと思ったんだ、手術が成功したのもなまえのおかげといっても過言じゃない」
「え、あ、はい、うん?」
「だから、俺はすごくなまえに感謝してるんだよ」
「えー・・・いや、こちらこそなんかありがとうございます、でも幸村くん、なんか怖いです」


怖い、空気から不自然にでた言葉に幸村はぴくりとこめかみを動かした、ウワワワワーなんか嫌な予感がぞわりぞわりとわたしの背中にくっつくように伝えじわじわと冷や汗にちかいなにかがわたしを侵食した、地雷踏んだよねこれ
わたしが怖いといったのは幸村じゃなく空気的ななにかであるなんか黒いオーラが目に荒々と流れている、これが属に言うブラックホールって言うのかなんて呑気に悠長な事を考えていたら幸村の白くて細い枝みたいな指がわたしの頬に触れた、ザワリ今は放課後で誰もいなく幸村ファンはきっとテニスコートで待機してるだろうからいろいろな意味で大丈夫なはずなのにポタリと威圧に負けたわたしは冷や汗を首が伝った、その瞬間にぎゅむ、重力とは違って二つ指がわたしを赤くなる程につまむ、頭は脳をぎゅるりと雑巾絞りをしたみたいにわたしは視界がゆがむ 「俺が怖い?何を言ってるのかなこの口は」
「ひ、ひゅいませ・・・いだだだだっ!」
「なまえね、俺が手術中に何をいったと思う?」
「や、わ、たしはなにゅもひゅってな」
「『幸村くんってたまに馬鹿だよね』って、俺に馬鹿とか言ったんだよ」
「だ、から!ちが」
「いい身分だよね、本当に」
「・・・ゆき、む」


制止がきかなくなったみたいに幸村はわらいっぱなしで何だか冗談抜きで吸い込まれてしまいそうだ、まだ死にたくないんですが、わたし、絶対温度は零度に近づきこの状況下からさっさと逃げたくなる、でもそうもいかないのはやけに幸村が悲しそうに瞳を細目にするからだった


「でも、本当に馬鹿だった、人に言われないと気づかないことってあるものだ」
「・・・そう、だね」
「ありがとうなまえ」


ぱちん、解放された頬はじんじんと痛んだでもこれは幸村の少しの痛さをわたしにも分けた様に感じたら不思議と麻酔にかけられたみたいに痛いとは掛け離れた様に感じる、なんだ、素直じゃないんだなあ幸村って、でもわたしやっぱ何にもしてないよ、なんて考えつつわたしは少しだけ笑うと幸村は椅子から立ち上がってテニスバックを手にとった


「だから覚悟した方がいい」
「・・・は?」
「お礼の代わりに俺がこれからずっと永遠になまえのこと虐めてあげるよ」
「な?なんでそうなる!?」


ガタン夕暮れに塗られた机に手をついてわたしは思い切り立ち上がったら幸村は教室のドアに手をかけていりところだった、そこで幸村はまるでわたしが悪いことをしたかのように首を傾げ「頬抓られて笑うなんてドMの証拠だよ」と確定を告げられた、違う!とわたしの口から飛び出した言葉は学校隅々まで行き届いたとか行き届かなかったとか
そうしてわたしの彼を救い自分を犠牲にした日常は始まるのだった




永遠を誓う
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