「でなっそんとき小春が〜」
「あーはいはい小春ちゃんかわいいね、わたしもそう思う」


たまにはサボりでもと屋上へ来てみたのが間違いだった、自販で買った紙パックの林檎ジュースをちゅーと飲みつつ後悔するわたしをよそにそうやろそうやろサボりのわたしにわざわざ付いてきた一氏は結構面倒くさかった、普段なら真面目授業を受ける(とも言えないけど)一氏が何故こんな屋上で小春ちゃん話をしているかと言うと小春ちゃんが今日休みだからだった、「小春がいない教室なんていられへん!」とか言ってて本当に一氏は小春ちゃん一筋だと思う、人の恋愛に突っ込む程野暮ではないけど一氏、普通にかっこいいからなんとなく勿体ない気がしたり、まあ小春ちゃんかわいいけどねお茶目さんだし
まだまだとばかり小春ちゃんについて熱く語る一氏をストローをくわえたまま小さく覗きこんだ


「そんなに小春ちゃんに会いたいならお見舞い行ったら?小春ちゃん風邪みたいだし」
「そうやな〜そーしたいのは山々なんやけど」
「・・・なにその目、え、わたしが原因!?」
「見舞い、いったらなまえといれへんやろ」


ボトッ、思わず紙パックを落としてしまった、な、なにコイツ誰!?一氏ってこんな爽やかキャラなの、初耳だ!なんて目を見開いて考えていたらずいっと一氏の顔が近づいてきてニヤリと嫌に笑った


「そうや!その反応が正しい!」
「・・・は?」
「今の白石のマネなん、昨日部室でヘタレ謙也のためにシチュエーションお題やっとってな」
「あーなんか、昨日真っ赤な忍足くんと校門であったのはそのおかげですか」
「白石がキザなことばっかいうはるんやけど小春がベタ褒めしてん、だから試してみたんや」


やっぱ引くん普通やな、なんて自信満々に言う一氏にちょっと白紙抜けしたのはここだけの話だ、幸い空だったから特に零れることはなかった空パックを拾いつつ学校のアイドル白石くんを頭に思い浮かばせた、白石くんは本当にアイドル以上にかっこよく性格もいいし当たり前に女の子はメロメロだ、気持ちも分からなくはないだって爽やかだもんね
「いや、引くっていうか白石くんしか出来ない芸当ですよ」
「はあ!?なまえは白石みたいのがいいん!?」
「いや違うけど!一氏がやったら・・・なんか、胡散臭いみたいな」
「う、胡散臭・・・」


苦いものを食べたみたいに顔を歪ませた一氏はそれから腕を組んで云々云々悩み始めた、話したりマネしたり興奮したり悩んだり忙しいなあ、でも普段しかめっつらばかりだから少しレアかもしれない、小春ちゃんには笑顔しか見せないけど
そうしたら解決したのか一氏がぽんと手を叩いてむぎゅうとわたしの腕を掴んだ、いきなり掴むものだからわたしはびくっと肩を揺らす、今度はなんだろうなんて考える暇もなくそのまま立ち上がらせ引っ張られた、ずんずん一氏は屋上のドアへと向かいわたしも引っ張らてそれに逆らえずして一氏の背中を歩は追う


「な、なん!?」
「小春の見舞い行くで」
「えええ今から!?てか意味わからないんだけどっ」
「これが俺の直球や」


くるり、一瞬だけわたしに顔をむけて歯をギラギラさせた一氏に意味もわからず心臓の一部分を握られたみたいにわたしはドクドクさせて、ガタンッ屋上のドアを開けたと思ったらそれを合図にエンジンがかかったみたいに強く引っ張らて階段をおりて校門を通って
直球ってなんだ、もう訳がわからないことばかりすぎて、だからわたしは赤くなる



こっちそっちあっちどっち



「小春ぅー!会いたかった!」
「ユウくん授業サボってまでお見舞いに・・・!?ユウくん!」
「小春っ!」
「何しにきたんだわたし・・・」

やっぱガチホモでした


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全力で、一氏をでれさせてみた
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