仁王が来ない
今日は仁王の誕生日だ!ってことでブンちゃんといそいそと仁王には内緒でクラッカーとかブンちゃんお手製ケーキとかプレゼントなんか買っちゃって朝早く学校に来て仁王が学校に来た瞬間にクラッカーでぱーんってして驚かしちゃおうとか計画していたのに肝心の主役がいないんじゃ何にもない日になってしまった、変わるとすればわたしたちと同じで色々張り切っていた仁王のファンとかテニス部のみんなとかがやるせない顔をしていることぐらい、それ以外は変哲のない122月5日、なんで仁王は休んだんだろうとぼんやり隣の席でグースカ寝ているブンちゃんを横目にわたしは黒板も見ずに考える考える、仁王はサボり癖が強いけど学校を休んだことは滅多に無いのに、そう思っていた瞬間ブルブルとスカートの中に突っ込んでいた携帯が揺れた、先生が私達に背中を向けている事を確認して机を手の下にコソコソと携帯を開いた、メールが一件、簡単に開いて見れば「英会話教室」ただそれしか書いていなかった、でも当たり前に意味がわかってしまうのはわたしだからである
キンコンカンコンと鐘が鳴ったと共にわたしは教室を飛び出したブンちゃんに手紙をひっそりと残して


「・・・仁王ー?」
「ん」


あんまり使われない英会話教室の鍵は思った通りあいていて開けて見れば温度がぽかぽかと保たれている風が肌を通る、だがキョロキョロと見渡す前にわたしはぎょっとする、なぜならば仁王がすっとわたしの前に飛び出しドアが自然に閉まるのと同じようにぎゅっとわたしを腕に閉じ込めるから


「作戦成功じゃ」
「・・・よく意味がわかりませんよ仁王くん」
「柳生ににちょる!」
「いや、そうじゃなくて!」
「んー・・・う」


もぞもぞわたしの肩に頭をぐりぐり押し付ける仁王はまるで猫みたいだ、でもただの甘えたりな子供にもみえる、顔を赤くしたりするまえにわたしはそんな事を考えた、いつもはつめたい仁王の体温がリアルに伝わるおっきなカイロにつつまれているような気分になる、それは羞恥とかそんなものじゃなくてきっと幸せとか憂いとか 「で、作戦ってなに?」
「言わなきゃ駄目なんか?」
「うん」
「・・・今日俺の誕生日じゃけん」
「知ってる」
「、で去年学校普通に来たら女子にかなりおっかけられたんじゃ、んで真田にたるんどる!とかいわれておっかけられたんじゃよ、最悪」
「ご、ご愁傷様です」
「好きな奴にも会えんかった」
「ん?」
「だから今年は、誕生日くらい一番に会いたかったんじゃ」


ぎゅっとわたしを抱きしめる温度を高める仁王にわたしはついに何かの糸が切れたように真っ赤になって心臓はドクドクと早くなる、好き、言われた意味を理解出来ないほどわたしは天然でもない、どうしようなんて考えられなくて反射的に仁王の背中に手を回してぽんぽんっと安心させるみたいに叩いた、くるしいくらいに力が強まる、もう仁王とわたしに距離なんてない、そう思った途端に力が緩んだ、仁王の顔が真っ正面にくるけどわたしの顔はきっと真っ赤だから、何か隠さなきゃいけないきがして勢いに余ってカーディガンのポケットか、はみだしていたそれを高くあけでひもを引っ張った

「た、っ誕生日おめでとう!仁王!」


ぱぁぁぁんっ、私の手の平から仁王の顔目掛けてクラッカーが火を噴いた、仁王は髪に色とりどりのリボンやらなんやらが絡まりながらぽかんと何か言おうとしたのか口を半開きにしたまま目を見開いて固まっていた、だから、その隙に少しだけ距離をとってわたしは一二回深く深呼吸、今だ固まる仁王の目にあわせてはにかんだ


「、すきです」


今日ぐらいわたしから言わせてください、だって今日は仁王が仁王であるために有る日だから、すこしでもわたしのこのぎゅうぎゅう押し潰されそうな愛を分けてあげたい、ぼろり、仁王は合わせていた目から涙を零してやっぱりさっきみたいにわたしを引き寄せた



「幸せじゃ」
「当たり前だよ」


だって今日は君の誕生日





教室に行けば赤いクラッカーがまたも待っている
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