「跡部会長って結構可愛いですよね」

女らしくも媚びた目で見る訳でもなくして書類をかっかと進める俺に大して差ほど押し付けがましくない、なんとなく会話を出したような顔をして会計長のヤツは言い放った、ピタリ、気に入っている万年筆と俺の手が止まり今は俺とソイツしかいない生徒会室はしいんと静まり返る、比べてヒクリと口元が嫌にひくつくのが分かる、俺は可愛いなんて言われて喜ぶ性別じゃなければ最も言う側であり言われる側ではない、慣れない言葉に拒否反応が体を侵食していく


「・・・お前頭大丈夫か」
「常に正常です」
「じゃあ眼科行ってこい、資料は俺がまとめといてやる」
「いえ、会長の手を狂わす程ではないです、それにわたしは視力良い方なんですよ2.0です!」
「ならなんで可愛いなんて言うんだよ」


雌猫共はコートの外でカッコイイと騒いでやがるのに全くの反対を言いやがる、少し興味が沸いて少しスピードを落として書類を片付けつつ耳を傾けた、俺は親しい奴しかこんなことしないからきっと今日だけ特別だろうか、そう思いながらがばぢが入れて行った紅茶の入るティーカップに口をつける


「昨日、わたし帰り道を変えてみたんです」
「・・・」
「そしたら大きなリムジンが止まっているお店がありまして、みてみたらペットショップだったんですよ」
「ぶっ!」
「それで入ってみたら右目の下に泣きボクロがある某会長さんが立っているのが見えましてね」
「お、まえ・・・」
「丁度猫にちゅーしているとこだったんですよ」


にっこり、コイツこんなに無邪気に笑うヤツだったかと疑いたくなるぐらい笑って俺をみる視線がこんなにも痛々しく感じるのははじめてだ、とりあえず紅茶を吹き出しそうになった唇を拭いカップを音をたてずゆっくりと机においた
まさか見られているとは思っていなかった、昨日は樺池の付き添いで行ったものの動物は嫌いじゃない、猫に触れれば擦り寄り多分人間としか判別出来ていないのに近寄る動物を拒めず唇が挨拶をする癖でしてしまっただけだ


「普段は雌猫、とか女子になんとか言ってるし氷帝のキングで王様気取りなのに、猫には無邪気にちゅーしてたんですよ、彼」
「・・・ああ」


もうからかう気しかないのかうごいていた手をとめて彼女は両手をつけて頬杖をしたままに俺に楽しそうに笑顔を向けた、自分と言えば最早怒るとは違う羞恥かなにかがじわじわと上がってきて思わずため息が一つ零れた、いつもなら不敵に笑うのに今は何だか笑えない


「可愛いですね、跡部会長」
「・・・うるせえ」




かわいいお人



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