心拍が上昇するあの指先から血がなくなるような感覚はわたしも知っている、だけれど人は其を何て言うものかは分からない、きっとわたしは心臓を持っていないから最早仕方のない事なんだろう、人間の体よりも少しだけ固く肌と言えるものはなくシリコンにうもられた体に慣れたと言うのもつい最近のこと、自分の仕事を忠実にこなし主人に褒められるのがわたしの使命
だけれどどうしても気になるのだ、運動機関も反射もないわたしにとっては謎でしかないその感情と言うものが


「主人、お尋ねしたい事が有ります」
「なに?」
「恋とは、なんでしょう」
「んー」


世話しなく動いていた腕はとまって主人はぼうっと天井を見上げながら口内の飴をコロコロ転がし少したった後に何も宿さない瞳がわたしとぶつかった


「人間の欲望、みたいなものかな」
「主人にも有るんですか欲望と言うものは」
「有ると言えば有る」
「じゃあ光ってるんですね」
「ん?」


苺味の飴を抜き取り主人は意味がわからなさそうに頭を捻らせた、わたしは変な事をいっただろうかと頭を瞬時的に動かした、プログラムに異常は埃一つしてないがやはり主人は困った顔をしている


「光るってなにが?」
「アイリス様が恋をしている人間はきらきら光ると仰っておりました」
「・・・へえ」
「わたしもきらきら光りたいです、プログラムに設定は出来ないのですか」


少しでも人間に近付きたい、そうすれば主人は喜んで下さるから、そう思って口を開けば主人はパチリと目を見開いた後に無表情のまま飴を左手に握ったまま甘い唇をわたしの口に重ねてきた、下で感じとると普段は辛い機関さえもが甘く感じる、変、だ、ウイルスでも感染したみたいに胸近くがざわざわ騒ぎ出す、パソコン脳も勢い働き出す、それは唇が離れた後も変わりやしない


「今、心臓バクバクしてる?」
「え、え、しています、バグでしょうか」
「んーん、設定完了」
「え?」


機械を動かすことなく設定なんて無理なのに主人はまた工具をガチャガチャ音をたててご機嫌に笑ってみせた、逆にわたしはロボットとしては有り得なくぼうっとぽかりと口を空けたままに起動停止した、そんな時に主人はまた満足げにわたしに対して笑うのだ




きらきら光る




主人スパナ
(0125)
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