「よい、しょ・・・」
自分と変わらない身長を背中にのせて抱えれば思ったより全然軽い体重がわたしにかかった、足を手に引っ掛けて細すぎた肉体があまりにもリアルに感じる、ちゃんと食べてるのかこれ・・・ぼんやり余韻に浸ってゆっくり道を抜けていく
なんでわたしがこんなことをしているかと言うと想像がつくようにわたしの背中ですうすうちゃんと酸素を吸うフランが任務中に倒れたのが原因だ、いつもはベルと任務が多いけど珍しくわたしとだからこんなことがいつもあるかなんてわからない、でも霧の幻術はすごく体力と精神力をつかうらしいから可笑しい話ではない、まだフランはベルよりも幼くて暗殺部隊の中でもマーモンがいない今じゃ最年少に近い、体の作りがままならない時にこんなただ体力を削る毎日だったら倒れるのが普通
でもフランのすごいとこは敵のボスをすんなり倒してから倒れたということ、ちゃんと目的の仕事は終えてからだからちゃんとした責任感はあるみたい、ベルに見習わせたいかぎりです全力で!
「・・・ん、あ、れ・・・」
「あ、目覚めた?」
「せん、ぱい」
いつもの声より掠れていて弱々しいフランは二回ほど咳ばらいをしてごしごしわたしは背中越しで見えないが目尻を擦っていた
相当熟睡していたらしくまわりをみるなり少し顔をしかめるようにして記憶がない脳を働かせようとしているようだ
「なんでおぶられ、・・・ミーもしかして」
「倒れたんだよ、大丈夫?」
「・・・大丈夫で、あやっぱり大丈夫じゃないです、歩くのだるいのでこのままでー」
「せめて本音を隠そう後輩!」
毒舌を吐くことが出来る辺り全然大丈夫そうだ、ちょっと心配したわたしのこころをかえせ!と言いたい所だが口をぎゅっと摘んで我慢する、相手は一応病人だ・・・大人になれわたし!そう暗示をかけてひとつ溜息をついてから優しい歩調にあわせて口を開く 「それにしてもいっつも後輩は任務遂行してから倒れるの?」
「まさかー確かに体力しか取り柄がない先輩には劣りますがミーもそこまでひ弱じゃないですよー」
「ナチュラルにわたしのこと体力馬鹿っていったよねこのやろう!・・・じゃなくて、じゃあなんでいきなり、貧血?」
「いえ、多分日射病です、こんなのかぶってるせい、でー」
「う、わ、ちょっと!」
「持っててくださーい」
頭から大きな物音をたててからフランはわたしにカエルの無線機を押し付ける、背中に人一人抱えてその手で大きな荷物まで持たなきゃいけないなんて流石に体力馬鹿のわたし(や、体力馬鹿じゃない!わたしはまだ認めない!)でもちょっと辛くて足をよろりと後ろについてしまった
「た、たしかにこんな重たいものこんな夏に被らせられたら暑いよね・・・」
「しかも中蒸れるんですよー将来ハゲたらどうしてくれるんですかあの堕王子ー」
「まあまあ、ベルの我が儘にもきいてあげてください旦那!」
「本当、なんでミーが前任のかわりなんてしなくちゃいけな、いん・・・ですかー」
鼻声混じりのその声にわたしはぴくりと反応した、フランがこうして愚痴を零すなんて珍しいことじゃないのにどうもぴりぴりその言葉が何かを締め付ける、わたしが悲しい訳なんかじゃないのに無償に心臓が痛くなった
「フラン」
「・・・」
「わたしはフランがいてくれて感謝、してるよ」
「、嘘なんかいりませんよー」
「嘘なんかじゃない、だってマーモンがいなくなってからベルがうざったいぐらいひっついてくるし任務は増えるしボスはなんか壊れて癒し系がないとかいいだすし」
「・・・」
「フランがいてからそれが全部なくなった」
「・・・なんか嬉しくないんですけどー」 ちょっとだけ間をおいてフランが口を開いた後わたしはわらった、わたしも分かっていなかったマーモンの穴埋め、やっと気づけた
「マーモンのいた所は一生穴埋め出来ないけど、でもフランの今いるとこも誰にも穴埋めなんか出来ないんだよ」
だから、あんまり頑張りすぎちゃだめだよ、そう言ったら今度はフランが笑い出した、顔は見えないけどフランがこんなにも素直に笑った声をきくのははじめてで内心ちょっとびっくりして無意味に口がぽかんとあいたまま
「センパイに説教される日がくるとはー」
少しだけ背中かしてくださいねー、そう言ってぎゅうと震えた肩はわたしへと近づけた、わたしはそれをなんとも言わないきっと言わなくてももう彼はわかってくれてる、と
or.
(0828)