や ら れ た
朝起きて妙に空気が冷たく感じる、カット用のハサミがベットの下に乱暴に投げ捨ててある時点で気づけば良かったものの寝起きでノロノロ亀の動きをするわたしの頭じゃ考え出せなくて、顔を洗うために洗面所に向かいいった時にやっと気づいた、前髪がくっきりと短くなっていることを


「ひ、雲雀さん!!!」


一旦スーツに着替えてから身振りを構わず自分の部屋からパンプスと共にわたしは飛び出す、早朝から廊下にコツコツたたき付ける音がうるさく獄寺さんに後で怒鳴られそうだが今は気にしてる暇もなく本部より離れた基地の通路を通りなのに日本調の襖をガラリと開ければ呑気にも欠伸をしながら片手でヒバードを遊ぶ雲雀さんが座椅子に腰をかけゆったりとしていた


「なんだい、朝から騒々しいな」
「なんだい、って、これやったの雲雀さんでしょう!?」
「ああ、結構早かったね気付くの」


まるで時間差ゲームをやっているように軽く雲雀さんはわたしの顔みて小さく笑った、反対にわたしの顔は歪む歪む、でも反論出来なく唇をぎゅうと結んだのは雲雀さんがこんなことをした理由をわたしは既に知っていたからだった
それは昨日、いつもの様に雲雀の元で書類を片付けていた時に雲雀さんは長くなった前髪を切った事に気付いて「雲雀さん、前髪短くて可愛いですね」と只一言フォローを言ったことだ、男のひとに可愛いと言って喜ばれないのは知っていたが雲雀さんにとってそれは禁則ワードの一つらしく怒りにあまって大切な彼の片手に収まっていた湯呑みはパリンと粉々割る程だった、わたしはそこで知る、無言が一番怖いと
因みに後で草壁さんに聞いた話しによると六道さんに朝一で「女の子みたいですね」とからかわれたらしい、ボスが壊れたアジトをみて泣きそうになってた理由はそれだった


「・・・いつもの咬み殺すはどうしたんですか」
「なまえは咬み殺したら本当に死にそうだから、僕の優しさを有り難く受け取りなよ」
「優しさっていうのは寝ている人の髪を無断で切る行為ではありませんー!」
「別に僕だって腹いせだけでした訳じゃないからね」


そう雲雀さんは口を開けばヒバードがふわふわ空気を読んだ様にどこかへ飛んでいってしまう、次にまた雲雀さんに目を向ければ立ちっぱなしのわたしに手招きをしていた、大人しく雲雀さんの横の畳みに座るとぐらり大きな掌が頬を包む、唇を開いて音をだそうとしたのにそれは息に呑まれ昨日までは前髪に隠されたおでこに生々しい温度が伝わる


「ここにキス、しやすくなるんだ」


意地悪そうに雲雀さんは少し温くなった額から唇を離して、それに対してなすがままのわたしは文句も言えずただ生暖かく居座る額の掌で感触を感じることと目の前でやはり小悪魔みたいに笑う雲雀さんを唇を縛って見るだけだった



ステラの敗北



翌日「おや、雲雀くんとお揃いですか」とからかってくる六道さんの髪に異変がおきた真相を知ってるのはきっとわたしだけ(ドンマイ六道さん!)



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