あついあつい
最高気温36度、季節的に異常気温を叩き出しているこの人間が住み着く地を誰もが恨んだだろうか、城のテラスに身を投げ出しても風はそよそよとしか私に恵んでくれない、決して脱ぐことを許されない光を通す隊服のコートを無理矢理腕まくりした
日がやっと沈みかけてほっとするけど明日もまたコンクリートが鉄板になるかと思うと口舌が苦くなった気がする


「はい、センパイ」
「ひゃ・・・!」


ピタリ、冷たさが頬から肩へとびりびり走って爪先立ちしていたハイヒールが思わず揺れる
氷みたいな水がつつーと垂れるのを横目にいきなり不意打ちをついてきたフランがにやりと悪どく顔にはあまりださないで笑う、センパイすごいマヌケ顔ですねーなんて先輩と思っている奴に言う言葉じゃないでしょと言いたいところだが冷蔵庫ですっかり冷えて私を驚かせたペットボトルをフランの手から引ったくって我慢してあげる


「ぷはー!やっぱり夏はサイダーだね!」
「親父臭いくせに飲み物は子供っぽいですねー」
「フランが買ってきたんでしょーが!」
「ハイハイお子様センパイ」
「そういうフランは何飲んで・・・うわあ、珈琲デスカ」


蛙帽子の下に影をやどす缶は真っ黒、缶が汗をかいているところをみるとアイスコーヒーみたいだ
それを覗いて勢い良く鼻をつまむ、私は珈琲が嫌いだからだ あの独特の香りもにがにがしい味も彼に子供っぽいと言われても仕方がないぐらい嫌いしかでない
開けっぱなしだったサイダーを口直しにぐびぐび運んだ


「ミーはセンパイと違って大人ですからー」
「・・・まあ珈琲飲める人はわたしから見ればカッコいいけど、」
「あ、ミーに惚れましたー?」
「死ねフラン」


ドキドキドキ、フランにばれないようにコートの上からやけに煩く響く胸を掴んだ、惚れた、なんて不意打ちだ
わたしは別に惚れた訳じゃない惚れている、現在進行形だしそれにフランのあのからかうような目はあきらかに冗談、まともに答えていればキリがないのだ
テラスの策に手をついてはあ、と溜め息を吐いたみしみし力が入るボトルは凹んでいく


「溜め息なんて吐いて悩み事ですかー?」
「ああ、うん、蛙帽子被ってる後輩のことで日々悩んでますよ」
「ミーでよければお力になりたいですー」
「・・・フラン」
「あ、惚れましたね今」
「しつこいよ後輩」


何度わたしの心臓を爆発させたいのか、目を閉じて本日二度目の溜め息を吐こうとしたら無理矢理体を動かされてくい、少しだけある身長差を利用して長い指が顎を伝う
さら、少しだけ伸びたクリーム色に光る髪が頬を擽った


「じゃあ惚れてくださいよセンパイ」


きらきら光るフラン後輩に恋してるわたしは、どうしてもこの状態で赤い顔はかくせなかった


違います、あきれてるんです



「顔赤いですよー」
「違う、しつこくて呆れてるの!今日は熱いの!」
「完全にミーに惚れましたね」
「違う!ずっと前から惚れて・・・あ」
「・・・センパイ?」


サイダーがパチパチと弾いていく中真っ赤な子供っぽい上司とクスクス笑う確信犯後輩



ベビーフェイス様に提出
不意打ちなフラン
(0115)
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