彼はマーモンが亡くなった数日後に昇格したからまだわたしと顔を会わせたのはたった半月だ
最初サラサラの髪に少しだけ座った目、ベルよりも小さく何と無く普通の一般人に見えたのはここだけの話
でも暗殺部隊に入るぐらいだからベルみたいに殺すのが好きとかマーモンみたいにお金が欲しいとかなのかなあなんて思っていたけどあまりそんな様子が彼には見えなくてわたしは頭を傾けた
人には必ず欲がある、だけど彼にはそれが見えない


「わたしフラン君がよくわからないなあ」


わたしがそう言えば隣でかえるの帽子をとったフランがコーヒーの入ったカップから口をはなした
人間観察が割りと得意なわたしだけどフランくんの考えていることとか感じてることが本当によく分からない、顔にはあまり出ないし出るとしてもそれは曖昧な言葉


「新手のナンパですかなまえセンパイ」
「違いますー!そのまんまの意味!」
「ミーのことがわからないってことですかー?」
「そうそう」


何を勘違いしてるんだろう、普段ジョークなんて言わないから少しびっくりしちゃったよ!
わたしがほっと一息ついていればフラン君はコーヒーカップを片手のままそうですねえと少しだけ考え込んだ声をだした


「会って半月ですしそれは当たり前ですよー」
「そ、だけどさ」


だってフラン君の噂は途絶えなくて、耳にするものは何だか本当なのかよく分からないものばかり
例えばフラン君はボスよりも権力を握ってる!(有り得ないけど)とか実はアキバ系アイドルが好き!とか
わたしがまだフラン君をよく知らないから見分けはつかないけれど、だってフラン君見掛けがあまりにも普通だから(美形だけど!)


「じゃあセンパイ、もしミーがもっと・・・レウ゛ィセンパイ見たいに髭男爵でアキバ系でしたらミーのことを拒絶しますかー?」
「え、別に・・・?」
「そういうことですよー」
「へ?」
「ミー達人間は見掛けで印象を作りレッテルを貼っていく癖があるんです、でも見掛けなんて関係ないんですよー、だから普通だなんて関係はないのですー」


にこり、フラン君はカップを机に置いてわたしへと笑った(わ、わ)
それに、と彼はまだ顔を向けたまま顔を近付けて接続詞のまま続けた


「ミーは残念ながらボスよりも権力はありませんしアキバ系でもないですよー」
「あ、うん、!」
「そんなにミーのことが知りたいならミーにきいてください」


ね、と念をおされて慌てて返事をした
そうだよね、気持がわからないのだってわたしは彼じゃないからそんなの当たり前
わからないことがあってどうしてもわからなければ、悩まないで本人にきけばいいじゃないか、だって彼はたった一人答えもたった一つ、沢山のレッテルには答えはないかもしれないのだから


「じゃあさ、フラン君」
「なんですかー?」
「今さ幸せ?」
「ハイ、センパイと話せてミーは幸せですー」



意味をなくしたレッテル



きっとこのどろりとした赤い感情にもレッテルなどは貼らなくても良いのだろう
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