まちまち適当に買った花束を掲げて日本庭園が広がるボンゴレの屋敷より離れた純和風な門をくぐり、インターホンを押した、カメラに睨まれ次にはガタリ音がして、そこにはにっこりと笑いながら「お久しぶりですディーノさん」と持て成すなまえ、一礼して花束を彼女の手に捧げれば少し照れたようにほのかに顔を赤く色づける、のびた襟足がこしょばしく感じた


「どうぞどうぞ、あがっていってください、恭弥さんも喜びます!」
「恭弥はよろこばねーと思うけどな、時間もあるし遠慮なくお邪魔するぜ」
「はい」


よく出来た彼女はすっと背筋をぴんと伸ばしながら俺を誘導させていく、この家に来るのも一度や二度などではなく結構来てるものだからこの家のにおいや感じ、間取りも大体わかっているのにも関わらずわざわざ案内をしてくれるものだから大したものだ、障子がキチッと貼られた襖をあければそこには畳の上の座椅子に悠々と座り机に向かいながら頭を動かす恭弥だった、襖が開けられたことに反応してピクリ黒い目が俺を捕らえて遠慮無しに嫌そうな顔が向けられるがそんなの気にならない、ズカズカ中に入ってだされた座布団に足をつく


「久しぶりだな、恭弥」
「僕は会いたくなかったけどね」
「相変わらずだな、お前!」


わしゃわしゃと弟子の頭を撫でればそろそろ怒りだすのか否か呆れた顔で溜息をつかれる、が可愛い弟子だから許される事だろう、変わらない恭弥に俺は口角をあげらずにはいられない、そうしたら後ろに立ったままのなまえも小さく笑った、空気は緩やかに和んでゆく


「なまえ」
「あ、はい!わかりました」
「あと、あれ」
「はいはい、いつものですね」


恭弥はなまえに口先だけそう言うと物体的に何を言ったわけでもないのに彼女は理解しトタトタ廊下に消えてしまった、それからお茶と茶菓子に恭弥のいつも肩に乗っている鳥の餌を手慣れた手つきで持ってきた、結婚してコイツら十年も満たないのにこのやり取りに思わず笑ってしまえば二人に珍しいものを見るようにきょとんとされてしまう


「本当っお前らすごいよな」
「意味がわからないよ」
「え、と、ありがとうございます・・・?」
「恭弥は良い嫁さん貰って本当に幸せ者だなっ」
「ディーノさんお世辞言ってもお茶菓子しかでませんよ?」
「あなたもさっさと結婚したら、三十路なんだし」
「そうだなあ、なまえみたいな奥さんが欲しいな」
「え!?」
「・・・へえ、逮捕、されたいんだ?」
「じょ、冗談に決まってんだろ!恭弥!」 真顔よりも目をぎらぎらさせボックスに手をかけた恭弥は殺気が半端じゃなく流石にちゃかしすぎたと全力でぶんぶん否定すれば三分たってやっと落ち着いた、冷や汗がだらだらだ


「・・・で、今日は何の用なの」
「ああ、そうだ忘れてたぜ、これ、お前達に」
「わ、ありがとうございます!」
「今日、記念日だから持ってきたくてな、俺からの粗品だ」
「記念日・・・?何言ってるの」
「今日のこと知らないのか恭弥?」


いじわるくそう笑って言ってみたら少し苛立っている顔で睨まれた、そういうところはいつまでたっても子供だと思う、カレンダーをみてみろよ、そう言ってなまえを横目で見たら気付いたのか真っ赤ななまえがいて、目を細めた
「じゃあ、邪魔したな」そう言い残して恭弥の家を後にした、今度きた時はさっきの花束が廊下に飾ってあるのと、あときっと俺が選んだ夫婦茶碗が並んであるだろうか
・・・あーあ、やっぱそろそろ身を固めた方がいいかな、俺も




いい夫婦の日




「ねえ、なまえ」
「・・・いい夫婦の日です」
「は・・・?」
「今日、です」
「・・・ふうん、あの人もたまにはいいことするね」


ゆるり、開けたばかりで新品の夫婦茶碗を恭弥さんはゆっくりと撫でた


(1123)
すぎちゃいましたが笑
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -