「君、」
くい、っと屋上で寝転んでいたあたしのネクタイを誰か引っ張った
閉じてた口と目を開けばそこには誰もが恐れる我等が風紀委員長サマがいた
く、くるしい!
「なんですか?今は昼休みだからさぼりじゃないですよ」
「そうじゃない」
風紀委員長はネクタイを掴んだまま前髪が下を向いたまま私に顔を近付けた
さぼりじゃない以外にあたしは何かしたのか?いや、してないよちゃんと授業も受けてるしスカート丈もちゃんとした指定の長さ
化粧もしてないし髪も染めてない、何も問題はないはず
と思ったら風紀委員長、基雲雀恭弥は私の胸元を指差した
「・・・ネームプレート?」
「何で無記名なの」
確かに生徒は全員が書かなければいけないネームプレートだがあたしのは新品、真っ白のままだった
でもこれには理由があるのだ
「あたしは苗字ないから、しょうがないんです」
そういうと雲雀 恭弥は目を一瞬見開いた
あたしは記憶のない赤ん坊の時に親に捨てられた
運良く死ぬ前に拾ってくれたのはイタリアのマフィンだかマフィアだかそんな金髪の男
あたしの手に挟まれた紙に名前は書いていたが苗字は捨てた親の身元がばれるからか書かれていなかった訳で拾った主はイタリア人、イタリアの苗字に日本語の名前など変に決まっている
下手に何か苗字をつければいいのだがあたしはそれが嫌だった
自分がなくなるみたいで
「・・・君、もしかしてなまえ?」
「あ、はい そうですけど」
「ふぅん」
意味深に雲雀恭弥はそう呟いた
多分あたしの苗字がない事をしっていたのだろう
捕まれていたネクタイが解放されて背中がコンクリートについた
「苗字がないのが事実なのは分かった、けどネームプレートは絶対に書かれてないといけないんだ」
「でもあたしには苗字がないから仕方がないじゃないですか」
「僕は風紀委員長、風紀が乱れることを許さない主義なんだよ」
きゅぽん
何処から出したのだろうか黒いマッキーを片手にした雲雀恭弥はあたしのネームプレートに何かかきはじめたのだ
キュ、と音をたてマッキーに蓋をした
「これで風紀は乱れない」
「・・・は」
満足げに言う雲雀恭弥と反してあたしは目を丸くした
そう、目を向けているネームプレートには達筆の綺麗な字で“雲雀”と書かれているのである
「苗字がないなら君は今日から雲雀なまえになればいい」
「・・・は、ぁ?」
「じゃあ、風紀も正したし僕はこれで失礼するよ」
風に学ランをぱたぱたさせて雲雀恭弥は屋上のドアをくぐっていった
残ったのはぽかーんと口を開けたまま放心状態のあたしとネームプレート
なんなんだ、あの人は
無記名のネームプレート
「・・・なんでまた無記名になってるの」
「あたしは雲雀じゃないですから」
「・・・(きゅぽん)」
「ちょ、また書かないで下さい!!」
新しいネームプレートを買えばまた雲雀と書かれて、
title/ララバイ