あたしは雲雀と言う字が嫌いです

文字の、しかも鳥の名前で好きも嫌いもあるか、と言われそうですが私はどうしても好きになれないのですこの二文字が
春になるたび配れる委員長決定と大きくプリントされた下の風紀委員とかかれた隣の文字が憎くて仕方がないのです
別にあたしだって最初から彼奴が嫌いな訳ではない、寧ろ あれだ、いわゆるいとこと言うポジションで、家もちかくて小さいころから雲雀家にはお邪魔していた 血が繋がっているのと小さい頃から一緒にいたからなのか雲雀の行動はもう手にとる様に分かってたつもりだ、だって幼馴染みも同然の仲である(と、あたしは思っていた)
だが それがかわったのは、頭の片隅に置かれた一年前の春だった
雲雀は、応接室で あたしを押し倒したのだ
あたしだって何があったのかわからなかった柔らかく包んでくれる手はきつく手首をしめて可愛らしいキスではなく深い、奥へとぐるぐるとまわるような大人なものをしてきた
あたしは怖くて突き放した、走った、部屋のベットへと飛込んだ、あたしを守るものを固めた 今でも覚えている、あたしが初めて一人で泣いたことを(いつもとなりに恭弥がいたんだ)
次の日、やっぱり怖くて近付けなかったけど あたしは恭弥を突き放したから だから 確に悪いのは恭弥だ(思春期なのはわかるけど) でも100歩譲ってあたしが悪いとして謝った ごめんねって 情けない声で
恭弥は黙ってた、あたしはふつむいた顔をあげたでもそこには恭弥はいなかった(背中から声がした) ばいばいと

それからあたしの季節はなくなったのだ(かっこよくいってみたけど、やっぱり嘘はなくて)
死んだ様に涙が落ちることはなくなった、泣き虫なあたしはなくなった、雲雀とつるんでいるという悪い噂もなくなった、さぼりぐせもなくなった
雲雀と話さなくなってから会わなくなってからあたしはそれはもうとてもいいことばかりだ
でも、
それは全部 なくしたものなのだ
(喜びたいよ、あたしだって)


それから季節がなくなったといえど、春はきた(待っていない春が)
クラスがえが行われて組別にずらりと名前が並べられていた たしか このプレートをみて 一年前のあたしは 顔を真っ赤にさせて喜んでいた(雲雀と言う字をみつけて)

反対に自分の名前をみつけつらつらとその列をみつめて、雲雀と言う字がないことを確認した
なかった なかったのだ ほっと息をついた あたしがみた 変わった雲雀はいなかった
やっと一年間きまずくみていたあの広くなった背中をみなくて良い日がきたのだ あの、黒髪を あの、目を やっと
ああ涙がでる 情けない声がでる ゆらゆら前がゆれる さくらがみえる やっと あたしは 、
(これは、きっと)
(嬉しい)



無くしたスプリング



でも、だから嫌いなんだよ
(あなたが変わる春が)

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