「雲雀さん」
「なに」
「シーツ洗いたいんですが」
「へえ」
「・・・」
「・・・」


なんなんだコイツ、とばかり真っ黒の髪に真っ黒の学ランを羽織りわたしのベットに悠々とねっころがる雲雀恭弥をじとりと睨んだ、言葉に出来ないのは彼が隠す鉄の棒が怖いからとかそんなのではなく決してわたしがチキンだからとか言う話でもない、と思う
今日は嫌というぐらい熱い日が昇っていて絶好の洗濯日和だというのに雲雀さんが踏ん反り返るシーツに手を伸ばせないのは上記から察して欲しい、学校、寧ろこの市はこの人中心に回ってるといっても過言ではないくらいの人物を狂わす事なんて恐れ多くて私なんかには出来る芸当じゃなかった


「雲雀さん」
「・・・なに」
「なんかあったんですか?」
「別に」
「なら退けてください!」
「じゃあ有る」
「どっちですか・・・」



くる、雲雀さんがゆっくり体を動かしてわたしに向くように寝返りをうった、そうしたら口許だけ笑ってみせる雲雀さんがなんとも憎たらしいこの上なく、ぐにゃり対象的にわたしは顔を歪ませた、不本意ながらわたしがこの悪戯顔に騙された事は少なくはなくて正装点検で一度引っ掛かったその時からわたしについたあだ名は雲雀の玩具だった、泣きそうにも程がある、帰せわたしの人権!



「僕は君に会いに来たんだよ」



は、ポロリ何かが落ちたように目を白黒させるわたしに今度は目を細めて手を唇にそえる雲雀さんはそれは面白そうに笑いわたしに走る赤い熱などのかけらはなかった、のぼせたみたいにわたしの体温が上がりに狂って思わずへにゃりとフローリングへと足と手をついた
純情にも程があるはずなのにこんなにも綺麗な笑顔に自惚れをもつ言葉をかけられれば一たまりもなく、きっとわたしじゃない他の人だったら倒れてるに違いないはず、で、
頭をぐるぐる余計に動かしていればぽすっ、熱であがった体温は髪まで伝い熱くなった頭に大きな手が触れた、俯いていた顔を少しだけ太陽に向ければやっぱり笑う雲雀さんがベットから降りていてわたしはそこで手を振り払い勢いよく立ち上がった


「っていうのは冗談だけど」
「・・・え、!?」
「僕、君のその表情好きなんだよ」
「ふ、ふざ、けないでください!」
「本当におもしろい」


弾かれた手をひらひらさせてから雲雀さんは不敵に笑った、意味が分からない
でももっと意味がわからないのはそのまま何か満足したように窓からじゃあね、と言う声とともにいなくなった彼だった
そしてわたしは少しだけ温もりがのこったシーツを洗濯機にかけながらぼんやりと思うのだ、雲雀さんって真っ黒な性格してる、綺麗になったぴかぴかのシーツをとりこみ思ったことは雲雀さんも太陽光線をあびてちょっと白くなったらどうだろう、そうしたら、わたしも素直になれる か な(別に嫌じゃない)



洗剤に浸かる吐息



「雲雀さん」「なんだい?」ばっしゃん「よっし!」「・・・へえ、僕に水かけるなんていい度胸じゃないか」「ただの水じゃないです洗剤をとかした水です」「だからそれが・・・」ばっしゃん「これが水です」「・・・」「雲雀さん?」「逮捕、するよ」「へ、え、うわっ!」


当たり前に少しも白くならなかった、素直になるのはたぶんまだまだ先の話しだろう



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