ゆらゆら
寝起きだからか視界はあぶなっかしく足を止めても揺れたままの状態でわたしはそれでもか、と言う程シルクの床を蹴った
息切れはお決まり条件走るのが遅いのも自分でしっているけど今はそんなことを気にしてられなくて
走る走る走る、ただ校内の玄関へと繋がる廊下をバタバタと騒がしく走った


「恭弥、くん!!」


目の端に見えた黒に心臓をドクリとはねらせ体内を駆け巡る血が流れるのが早くなった気がした瞬間に、無意識に口が開いた
足音はとまって其にむかってラストスパートをかけようとしたら止まって、と気迫が漂う切れた声が耳に入り止まりたくないのに足は言うことをきいて凍ったみたいに動かなくなった
彼との距離はすこし、なのに


「凶悪犯のところ行くなんて危ないよ!」
「僕がそう簡単に殺られると思う?」
「おもわ、ないけど」
「じゃあおとなしく待っててよなまえ」


ね、と恭弥くんは子供をあやすみたいに優しい声で言った
でも彼は声だけで此方に顔を向けてくれない、恭弥くんはいつもそう、危ない事をする時は絶対にわたしと目をあわせない
ふわりと学ランの袖が宙に舞う


「や、だ!恭弥く」
「僕は大事なものを全部守らなきゃいけないんだ」
「きょう、や!」
「なまえ」


だだをこねるみたいに叫んだ泣いた、でもそれでも恭弥くんは私へと顔を向けてはくれない
恭弥くん恭弥くん、行かないでわたし恭弥くんの事好きなの大好きなの、草壁さんみたいに恭弥くんもあんなになっちゃうなんて嫌なんだよ
なのに、恭弥くんは


「行ってきます」


恭弥くんはずるい、ふわりとわたしに一瞬だけ微笑んだ顔を見せてわたしの思考をストップさせる
そして全部の機関がとまりかけても心臓の音はきこえる、段々早くなる胸をぎゅうっとつかんでヘナヘナ重力に引かれていく(わたしは、とめたいのに)

ねえ恭弥くん、その大事なものにわたしは入ってる?


不揃いなハート


それが彼の優しさだとしたら絶対にわたしは許せない!


黒曜に行くひばり
(0104)
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