笑わない、笑わない、笑わない
人間って表情が普通顔にひょろ〜と出るものじゃないか、と言う私定義の理論は全くもって只の当て付けにならないとしてもなんだかひねくれもののわたしには当て付けじゃ納得の行く答えにはたどり着けない
立派なソファに座って黒いお気に入りのパンプスを真っ赤な絨毯にコツコツ音を鳴らしながら憂鬱なしかめっ面を相変わらずわたしはじいと見つめたまま
「・・・なに?」
「笑わないなあって」
「仕事中だから当たり前でしょ」
「雲雀は仕事中じゃなくてもわらっていませんー!」
「笑うときは笑うよ」
「・・・ふうん」
それからひたりとしとしと窓の外で降る雨みたいにわたしのパンプスもなりやみ、どちらとも口を開かなく沈黙が冷たい空気を包んでいく
でもわたしは雲雀の笑顔なんて見たことないんですけど、なんて言える訳なかった、わたしが雲雀と会ってまだ数ヵ月しかも出会いなんて最悪所ではないぐらいのもの、苦手意識していたのは紛れもなくわたしの方だ そんな嫌悪されている奴に笑いかけるなんてするような器用な奴ではない
「いつ、笑ってる?」
「人間楽しいときには笑うからいつなんてわかりやしないよ」
「まあ、そうだよね・・・あ、じゃあ誰といる時笑ってる?」
「はあ?」
「やっぱり骸とか?」
「咬み殺すよ」
たったの六文字の語呂だと言うのに部屋いっぱいに広がる殺気をわたしに気付かせるのには充分な程だった
本気で怒らせてしまったみたい、だってボスが「雲雀さんは色々な意味で骸と闘ってると生き生きしてるよね」って言うから言ってみたのに!否普段白く染まった眉間は今とても活き活きしているけれど、もしかして地雷を踏んでしまったのだろうか 冷たい空気がわたしにまとわりついてくる
「ゴメンナサイ」
「素直でよろしい」
「なんで上から目線・・・ちょっと言ってみただけなのに」
「そう、そんなに君殴られたいの」
「わたしが悪かったです、怖いから真面目にやめておくれ雲雀財閥長!」
「君の謝罪はきき飽きたよ」
「はいはい・・・ねえ雲雀」
「なに」
「どうしたら笑ってくれる?」
わたし雲雀の笑ったとこみてみたい、だっていっつもトンファー持って殺気むんむんで、でも顔ばかりは綺麗に整っていて女みたいに睫毛が長く綺麗、なのにその睫毛がふるふる揺れて笑みと言う勝手な人間の心理的感情を宿さない
とっても気になる、人間が神の作品だとしたらどんな傑作が拝めるかと
雲雀はデスクについた頬杖を解いて鼻を不敵にふっと偉そうに鳴らした、そのまま先程までペンが走っていた紙を掴み上等の椅子から立ち上がって黒の靴を優雅にならし私がすわるソファの方向へと人指し指をたてた
「君が笑ったら笑ってあげる」
わたしの鼻をその指でコツンとこづいて雲雀は執務室から任務記録を持って出ていった
ゆるゆる緩くなる頬が憎くて手で必死に抑える、思えばわたしも雲雀に笑みを見せていなかったかもしれないなんて脳裏を過ぎ去った、
一瞬だけ見えた彼の横顔は確に神もが笑みを返すだろうそれはそれは美しく綺麗なものだった、寧ろ彼自身が、
世界が唄う、神が笑う
今度雲雀にあった時はめいいっぱい笑えるだろう
笑う雲雀
(0110)