お気に入りの赤水玉にハートの取ってのマグカップの中、茶色のあまい匂いがするそこにミルクをまるを描くみたいにぽとぽと落としていく
ふんわり暖房のおかげであたたかくなったソファに腰をうずめて星がついたスプーンでくるくるカップをまわした、あまい匂いはさっきよりも増してまるで砂糖菓子に包まれたみたいにわたしに眠気をさそう
「雲雀くんまだかなあ・・・」
時計はかちかち二時をまわっていて何時もよりも遅いって何度も思う頭をクッションに向けた、あったかいマグカップをまわす手はぴたり、とまる
ひばりくん遅すぎる・・・いつもだって遅くても一時には帰ってきてくれたのに、う、浮気・・・とかかなっいやいやいやでもひばりくんに限ってそんなこと有るわけないよね?ああでも、でも・・・
優柔普段なわたしはぐらぐら頭を揺らしながらこたえを探した、けどわたしが持ってるものではなくて結局ハテナがわたしを侵食していく、うつらうつらいつもこんな時間まで起きていないから段々と世界は歪んでく
「ただいま」
「・・・ひばりくん?」
「遅くなってごめんね」
「ううん・・・浮気!じゃないよね・・・?」
そうしていればひばりくんらしき人がネクタイに手をかけてわたしにひょっこり姿をあらわした、眠くてぼやぼやの瞳では中々確認出来なく目をパジャマの裾で拭った、そうしてもやっぱりぼんやり硝子一枚を挟んだ世界のままだが、彼と言えばワイシャツになったままにわたしが持っていたマグカップを拐っていく
あ!と言おうとしたらふんわりクッションよりも柔らかいものが口を覆ってつぎにはあまいココアがざらざらの舌と一緒に流れてきた
砂糖はわたしの舌に絡み付いて一旦ひっこんだ後にまたにゅるりとわたしを食べて行く、それはながくわたしの酸素が切れるまで食事は続いた
「浮気してたらこんなことしないよ」
「ひばりくんめ・・・っ」
「ふふ、眠いんでしょ?」
不意打ちでキスなんてずるいよ、って言おうとしたらまたミルクの香りがする唇がおでこに小さくつつく、それはそれはあまいあまいテノールで
「おやすみ」
はみがきするの忘れた、そう呟いたのは温かい小鳥がなく頃かしら
ミルクココアの魔法
残業雲雀
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