「ねえ、鍋しない?」

彼はいつだって唐突だった、最初出会った時もそうだし会う時もまばら、まさに神出鬼没という言葉が似合い年相応に見えない少し幼さが残る顔立ちにわたしは幾度と騙された、来神高校から今までなんやかんやと腐れ縁を伸ばしていて今日も趣味で食べて行ける彼とは違いコツコツ働いてるわたしは帰り道捕まったのだ


「いつもながら偉く唐突だね、臨也くん」
「何鍋が食べたい?しゃぶしゃぶ?カニ鍋とかもいいんじゃない」
「聞いてないし・・・じゃあ昨日しゃぶしゃぶ食べたからカニ鍋がいいな」
「へえ?独り身な君でも一緒に食べてくれる奴が出来たのか」


心底どうでもよさそうに臨也くんは暗がりに光るガードレールに手をつきわたしをじろじろみながら口を開いた
嫌味がやけにこもっているがわたしは軽くスルーをした


「違うよ、昨日は新羅の所でね鍋パーティーに呼ばれたの、セルティもいたしほら、静雄くんもいたから、他にも高校生の子とかもいて・・・」
「・・・そういうこと」
「ん?」
「まあ俺には関係ない事だ、シズちゃんがいたんじゃ鍋に箸なんてつけたものじゃない」
「えーと意味がよくわからないんですがー・・・!」


一人ぶつぶつ独り言に言う臨也くんはすこしいじけてる様に見えた、そっか、昨日鍋パーティーに呼んで貰えなかったのが悔しかったのか!新羅は呼ぼうとしていたらしいけど静雄くんが嫌だっていってたのを思い出して苦笑した、可愛い所もあるものだね臨也くん
おかしくてわたしはいじける子供をみたように錯覚をし、真っ黒のシックなコートからのぞく手をぎゅっと握った、小さい子は手を繋ぐと安心しるときいたから、そんなわたしに臨也くんはぎょっと目を大きくしてから胡散臭そうにじろりと赤目をきかせる


「何さ」
「ほら、材料買いに行こうよ、カニカニ!」
「君は調子がいいね、別に俺はいじけた訳でも子供でもないって事ちゃんと覚えてるのか」
「はいはい知ってる覚えてるよ」
「あと嫉妬してる訳でもなー・・・」
「知ってるから、って・・・臨也くん?」


墓穴を掘ったとばかり臨也くんはわたしから目を反らした、反射的に視線を追おうとしたのだがぐいっと繋いだ手から引力が走り臨也くんはわたしを引っ張る様に歩き始めた
嫉妬って誰に?イマイチ主語やらが足りなくて理解が出来ない、でもわたしはこんな年で鈍感でも天然でもありやしないから、少しの色付いた感情を安々に見過ごす訳もなかった



気まぐれドラマチック


「臨也、くん、ちょっと!」
「、黙ってくれない、シズちゃんに見つかるから」
「え、や、だって耳真っ赤」
「・・・寒いんだよ、だから手繋いであげてるの」


文句なんてないよね、拒否権は奪われたとばかりコツコツ新宿へと急ぐ道を歩いた、そんなふわふわのコートきて、掌もしっかり温かいのに、臨也くんってば言い訳が下手になったなあ
そんなわたしに見せた臨也くんに、わたしも同じく耳をあかくした


(0314)
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