プルルルル
そろそろ寝ようと思ってぬくぬく湯たんぽの入った布団にはいりこみふう、と息をついた時だった、はじっこにしきつめたクッションの上にあげていた携帯がチカチカなりだして手をのばして通話ボタンを押した、時刻は23時
「もしもし」
「ばんわ」
「・・・光か、どうしたの?こんな時間に」
「なんとなくッスわ」
なんだそりゃ、って返そうと思ったけどうとうとしてきた体のせいでいえなかった、もしかしたらたんに嫌がらせ電話かもしれない、なんて思ったけど光の声はなんとも聞き取りずらくそして息遣いがまばら、なんでだろうとぼんやりと携帯をかかげて布団の中で足を擦り寄せた
「先輩、」
「んー」
「もし明日地球がなくなるとしたらどうしますか」
「・・・財前くん怖い夢でもみたの」
「・・・」
沈黙、あ、図星だ、光は当てられた時にだまるくせがある、謙也がいっていたのを思い出した、明日地球がなくなる夢をみて怖くてわたしに電話してきたってか、はた迷惑な話だけど先輩としては、わたしとしてはなんだか嬉しい話だった、わたしを頼ってくれてる、そしてなんか可愛いなあなんて余裕をもった
「大丈夫だよ、明日もいつも通り練習あるから」
「・・・俺はどうするかをきいとるんです、明日なくならないなんてしっとるわ」
「はいはい!・・・んー、そうだな、わたしなら、」
「・・・」
「美味しいものたべる」
「・・・想像通りや」
「光よくわかってるね、わたしの性格」
「当たり前っす」
光がすこし笑った気がした、電話ごしだがらいつもよりも表情の違いがわからないけどほんのすこしの変化
「光はどうするの?」
「・・・俺は」
プッツン
そこで通話がきれてツーツーツーと無機質な音が流れた、いきなりきれてびっくりして思わず布団から起き上がった、そうしたらなぜだかよくわからないぐらいにざわざわ胸がざわめいてふと冷たいフローリングに足をくっつけた、引き寄せられるように窓に歩み寄って、まるで恋愛小説にありがちな展開で現実にはないとは思ってるのにカーテンを左右にどけた、月明かりが入って次にみえたのは息を乱した彼だった
「光・・・?」
そこから一階のわたしの部屋から窓をあけて光は土足で入ってきた、汚いなんていう暇もなく光はわたしに近寄ってくる、はあはあと電話ではかすかにしかきこえなかった動機の乱れがじかにきこえた
「俺なら、こうします」
ぎゅう、光はそれだけいってわたしを抱きしめた、冷たい体に包まれてわたしは固まってしまって、心臓があまりにも耳鳴りのごとくうるさくて動けない、ただ呆然とたっていたら光はゆらり力が抜けたように揺れて当然抱きしめられてるわたしも中でやんわりとゆれた、そしてふたりしてあたたかなベットに倒れ込む、展開につけていけなかった
光はよっぽど急いでいたのか力つきて目を閉じていた、それをわたしは見てさっきの余裕を取り戻す、ぽんぽんと冷たくなった光の髪の毛を撫でたら猫みたいに気持ち良さそうにした彼に暗示をかける、大丈夫だよっていう魔法を、明日地球はなくなりやしないしこんなことをしなくたって光の隣にいるから
明くる朝、きっと彼はわたしに昨日言い忘れたとばかり寝ぼけた顔でこういうだろう「先輩、好きや」
ラプェンツェルの祝福
(0201)