がやがやとした町中は何だかなれていなくて人混みのなかブーツをしっかり地へとくっつけて必死に歩いた、休日の日本の大通りはまるでスクランブル交差点みたいに車とひとが交わっていて歩きずらいのこの上ない、やっと人込みから離れられて息をつけば隣にいたフランもわたしと同じく溜息をふうとついていた


「あーもう疲れた!」
「ジャポーネの正月は何処も人でいっぱいでウザいですねー」
「てかなんでベルのためにジャポーネまで来なきゃいけない訳がわたしはわかりません!」
「仕方ないですよー何故ならベルセンパイはまるで堕ちちゃった王子、略して真堕王なんですからー」
「うまい!流石フラン大佐!」
「ありがとうございますー奴隷さんー」
「ん?まてまて先輩であるわたしに何て言ったのかなフランくん?」
「きっと空耳でーす」


少し余裕が出てきたところでまた人込みに向かっていく、片手に竹寿司さん家の重たいお寿司を掲げて、因みにフランは倍重たいだろうお節の重箱を持っていた、フランがお寿司も持ってくれようとしたけどどちらも持たせるような事は後輩の彼には先輩として出来ない、疲れて余計な重量感が感じるがそんなの気にしてられなくぐらぐら人込みをかきわけてイタリアへと向かう一歩をいっぱいいっぱいに踏み出した、そうして暫くたったらくいっと服の裾が引っ張られるような気がして振り向けばパチリと初めてみたうるうるのエメラルドグリーンの瞳と衝突する


「センパイー、ミーあれ欲しいですー」
「・・・は?」


フランが指差した方向を見ればそこはゲームセンターでUFOキャッチャー、目を細めて中をみれば大きなカエルのぬいぐるみがウィンドウを挟んで見つめていた、わたしはそれを見るなりびっくりして固まったがフランに腕を捕まれて無理矢理引っ張られゲームセンターの例のUFOキャッチャーまできてしまった、もう一度フランをみればやっぱりうるうるで、まるでか弱い子犬みたい、初めて後輩に頼られしかもこんな瞳で見られたらやるしかない!わたしの中で何かが燃えあがった


「・・・あー!アーム弱すぎだよこれ・・・っ」
「センパーイ」
「う、がんばるよ」


こんなの当たり前にやったことなかったからいくら手先が起用とかいわれてもはじめっからこんな大きなぬいぐるみは取れる訳ない、でもでもフランをみれば可愛い後輩が映ってやらなきゃって気になる、わたしは弟を持った姉かってツッコミをいれたくなるぐらいジャラジャラ両替をした小銭を投入していく、だけど三千円ぐらいつかったぐらいでうなだれた、重い荷物を抱えたままでは精神力が続かない


「・・・本当駄目なセンパイですねー」
「フラン・・・」
「ちょーっといいですか」
「え」
「おー意外に簡単ですねー」
「ええええ!!!!」


わたしが何度やってもとれなかったカエルをフランは一度流した100円玉ひとつですんなりととってしまった、ガコン、大きなカエルが下から顔をだす、フランはよっこらせとそれをとってわざとらしく「うーん」と口を濁した、わたしは何だか頭がついていけずお寿司と100円玉がいっぱい入った財布を抱く


「これ、重たいですねー」
「え、あ、そうなの?」
「センパイお寿司くださいー」
「うん?」
「で、これセンパイにあげますー」
「、ま、まってそれじゃフラン重」


わたしからお寿司の盛り合わせをひったくって、かわりに大きなカエルのぬいぐるみをわたしに無理矢理もたせた、さっきよりもずっと軽くて浮遊感をふんわりかんじる、フランは嘘をついていた、軽くなるのはいいことだけどあの重い重箱にお寿司ってフラン死ぬんじゃないの、って思ったけれどフランは意図も簡単に顔を苦に曲げず平然としながら両手にそれを掲げていてわたしにまるで黙れというような瞳を向けていた、だからわたしは言いかけた口が押し黙る


「言っておきますけどーミーは後輩とかいう前に男ですからー」
「・・・ハイ」
「こうみえて筋肉ムッキムキなんですよー」
「いやそれはない!!」
「なんか言いましたかー奴隷さん?」
「あ、はいすいません」


スタスタとわたしの前を歩いて人込みをかきわけていくフランはさっきの子犬のような顔は勿論なくてあんな重い物を平然と持ってそれが当たり前のようにわたしを誘導する彼は不思議と確かに見た目は細いけど後輩じゃなくて男に見えた「・・・フランはやさしいね」欲しくもない人形をつかって口実をつくり、さも何もなかったように女のわたしに楽をさせようとした、自然と出ていた言葉にフランを背中をむけたままだった、いつもなら毒舌が飛び出すのに、そう思ってフランの顔を伺えばほんのり赤くなっていた


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