あれから財前くんの背中をおいかけてせかせかしながら帰った、緊張して話せなかったりしたけど財前くんはヘッドホンをしたままだったけれどわたしにあわせて歩幅を小さくしてくれたり、自転車に乗らないでカラカラおすだけにしてくれたり、わたしの家まできっちり送ってくれた事だとかなんだか嬉しくてたまらくて、ちゃんと見てくれてるんだって感じて彼氏と彼女なら当たり前のことなのにもう帰ってお風呂や夕飯寝る前までも頬はゆるみっぱなしだった
今日はどうにも学校に行くのが楽しみで、いつもよりずっと早く学校へ行ってみた、流石に早く来過ぎたみたいで殆ど生徒はいなくって先生もまだ来てない人がいるぐらい、新鮮だなあなんて思いながらぼんやりと教室にいても暇だから校舎の中を歩いた、陸上部は朝練がないからこんなに早くきたのははじめてだ、いつもお笑い主義な学校だから笑い声がたえないのに今はこんなにも廊下がしいんと静まり返っている、パコパコまだ少し大きい上履きを鳴らしながら昨日の渡り廊下を通った、「あ、」ふと視線に入ったものに反応する、淡い色が太陽に反射していた


「ん・・・、あれ、昨日の財前の」
「お、おはようございます」
「おん、はよ」


そこにいたのは昨日も会ったあのテニス部の部長さんだった、にこりと愛想がいい笑顔は太陽よりも眩しく感じる、テニスラケットを片手にジャージを着こなしていて朝練かと思ったら回りには誰もいなくって、眉を潜めればわたしの行動で疑問を把握したのか「自主練や」と答えてくれた、自主練とかすごい、「流石部長さんですね」と思った通りに言ったらはにかんで「おおきに」と言われた、よく出来た人だと単純に思う

「そういえば自己紹介してへんかったな、俺白石蔵ノ介いうん」
「わたしは、」
「みょうじなまえさんやろ?」
「え、」
「謙也からきいたわ、陸上部にごっつ早い新人がいるんやで!ってな」
「忍足先輩が」
「それに財前の彼女なんて珍しいさかい気になったん」


彼女、やっぱり自分で思うのと誰かにいわれるのじゃ感じる感覚が違う、ドキドキ鼓動が早くなって顔がほんのりと熱くなった気がした


「財前はあんなやつやけど根はいいやつや」
「・・・はい」
「よろしくしてやってや」


ぽんぽんと白石さんはわたしの頭をあったかい手の平で撫でた、まるでお母さんに撫でられたみたいな安心感がぐっと込み上げる、優しいふんわりとした笑顔にまだ知り合ったばかりなのにどうにも信頼をしてしまった、すごくいい人だ白石さんって
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テーマ「人外ファンタジー」
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