今日は世間では七面鳥やケーキやなんやらを口にする浮かれる日だ、恋人達はきっとロマンチックなムードになってキスしたり、又は家族や友達とわいわいホームパーティーをしたりして楽しむ日だっていうのに私と言えば今日も変わらず仕事で、しかも出張、ギラギラネオンが輝くアメリカはあんまりにもわたしにはクリスマスムードが強すぎて逆に引いてしまいそうになるがやっぱり体は例年までに楽しんでいたクリスマスを忘れる訳なく何かしよう!と思っていた、仕事が終わってケーキでも買おう


「という訳で雲雀さんはなんのケーキが好きですか!」
「くどいのは嫌いだよ」
「あ、はいすいません」
「なんで謝るの」
「なんか口から出てました」
「変だね君」
「・・・褒め言葉と思っておきます」


今回の出張は珍しく雲雀さんとふたりきりだった、草壁さんがいないのは珍しい、わたしは雲の直属の部下に配属されるから雲雀さんと話すのがこれが初めてという訳じゃないが雲雀さんはあんまり口数が多くないからまともに二人きりで話すのは初めてといっても過言ではなかった
だから雲雀さんが甘いものがあんまり好きじゃいことだって当たり前に知らない訳で、路上で売ってるのはパーティー用のホールケーキばかり、とても一人で食べ切れるような量じゃないしお店に行って買うとしてもホテルまでは一緒に行動しなきゃいけないから雲雀さんを待たせるなんて出来ないというか怖いから無理だし
諦めて路上で売っている生クリームがふんだんに使われてクリスマスカラーに包まれたクレープを一つ買った、ケーキじゃないけど我慢だと言い聞かせる、雲雀さんにはほかほかのホットコーヒーを一緒に買って渡してみた


「それ、クレープかい・・・甘い物好きなの」
「嫌いじゃないですけど、なんかムード的なあれです!」
「ムード?」
「今日クリスマスじゃないですか」
「ああ・・・そういえばそうだったね」
「だからこんなにもホテルも内装がこっているんですよー」


クレープを食べながら歩いていたら案外早くにホテルについて入口から入ろうと自動のドアに足を傾けようとした時、隣に聞こえていた足音がきえてふと雲雀さんを見たら何かに気がついたような呆れたような顔をしていた、そしてぼんやりと雲雀さんは思い出したように上を見上げてから「ふうん」とつぶやいてから私に顔をずんと近付ける、思わず後ずさりしてしまいそうになったがその前に頬にちゅっと無機質な音がして、わたしの後ずさりする足も瞬きをしそうになった瞳もピタリと止まった


「え、・・・えええ」
「何、その反応」
「だっだって雲雀さんが」
「クリーム、ついてただけ」
「あ・・・そう、なんですか」
「それと、上」


それだけ言って雲雀さんはスタスタと自動ドアをくぐりフロントへと行ってしまった、取り残されたわたしは指された上を見上げる、そこには緑の植物が天井伝いに飾られていた、それからゆっくりと頬に手を滑らせたけど生クリームがついていたような後はのこっていなく只生温い体温だけがほのかに色づいていて、急いで雲雀さんを追い掛けていったらホテルの従業員さんたちがなぜだかニコニコ笑っていた


「ああそうだ、今日は早く寝なよ」
「え、なんでですか?」
「アメリカでは悪い子にはプレゼントじゃなくて石炭が靴下に詰められているんだって」
「せ、石炭・・・シュール・・・」


その時なんだか雲雀さんがほのかに笑った気がした、だからさっきなぜキスしたとか聞かず仕舞いになってしまったりしたけれど、見事に躍らされて早く寝ちゃったり、雲雀さんをみるたびにドキドキするようにされてしてしまったりしたけれどきっとこんなクリスマスも悪くはない


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アメリカではミスルトウというクリスマスに飾らる植物の下にいる(好意のある)女性にキスしてもいいという伝統があるそうです
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