拍手SSまとめ | ナノ
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「俺は嘘や隠し事が苦手だから、正直に言う。君のことが異性としてとても気になっている!」
「わ、私も、です!!」

そんなやり取りをしたのはもう三日前のこと。新しいクラスで初めて隣の席になった、炭治郎君。優しいなあ、かっこいいなあ、ドキドキしちゃうなあ、なんて芽生えつつある恋心に胸を焦がし始めていたら、たまたま二人きりになった放課後の教室で炭治郎君も同じ気持ちだと宣言されて、すごくびっくりした。
その後は「これからお互いのこと、もっと知っていけたらいいなと思って」「うん。私もそう思う!」と二人でほっこり笑い合った。お互い決定的な告白をし合ったわけでもないので、友達以上恋人未満というか、なんともいえない宙ぶらりんの関係がはや三日続いている。
帰り支度をしながら今日も隣の席をチラチラと気にしていたら、不意にこっちを向いた炭治郎君と視線が交わった。

「なあ、携帯番号を聞いてもいいか?」
「え、携帯番号?いいけど…LIMEとかじゃなくて?」
「ああ。元々そういうのには疎くてやってないから、よくわからないんだ」

炭治郎君が苦笑する。今時の高校生でLIMEを使っていないとは珍しい。そう内心思いながらも、「じゃあ炭治郎君の携帯に直接番号打ち込もっか?」と提案すると、嬉しそうな笑顔を浮かべた炭治郎君は「ありがとう!」と自分の鞄に手を突っ込んだ。
そして出てきたのは……あれはええと、お年寄り用の、かんたん携帯…?今時なかなか見ないパカパカするタイプの躯体に、老眼でも識別しやすいよう大きな数字が印字された電卓みたいな文字盤。炭治郎君の言う『そういうのに疎い』具合は正直なところ私の想像した以上で、思わず一瞬絶句してしまった。

「…スマートフォンじゃなくて、驚いたか?」
「えっ?あ、いやええと、珍しいな、とは思った」
「妹たちから色々教わったんだけど、どうしても使いこなせなくて…。お兄ちゃんにはもうこれでいいでしょ!って言われてしまう始末で」
「でも、携帯は持ってるんだね」
「ああ。うちは兄弟が多いし店もやっているから、いざというとき家族と連絡が取れないとまずいんだ」

話をしながら、かしかしと慣れない感触のボタンをプッシュして自分の携帯番号を打ち込んでいく。流石はお年寄り用というべきか操作方法は至って簡単で、初めて触った私でもすぐに登録画面を開くことができた。

「これってメールはできるの?」
「機能的にはできるらしいが、俺じゃきっと使いこなせないし、契約してるのは電話回線だけだよ」
「そっか…。LIMEもメールもダメだと、電話しかできなくて結構不便そうだね」

電話帳に間違いなく自分の番号が入っているのを確認してからはいどうぞと携帯を返せば、それを受け取った炭治郎君がほんのりと頬を染めて、言う。

「俺としては…電話しかできないのを言い訳に家でも君の声が聞けるから、この携帯で良かった、と思ってしまうんだけども」

ずるい考えですまない。ってちょっぴり恥ずかしそうに笑う、その笑顔が、ずるいよ。私まで顔が熱くなって、むず痒い気持ちで胸がいっぱいになった。

「今晩、電話してもいいだろうか?」
「う、うん。いつでもいいよ。待ってるね」

嬉しくて、声がちょっと震えちゃったかもしれない。じゃあまたあとで、と手を振る炭治郎君を見送りながら、思った。電話。電話かあ。どんな話をしたら、炭治郎君は笑ってくれるだろう。
友達とはLIMEで連絡を取ることが多いから、誰かとあらかじめ約束して電話するなんて久しぶりだ。しかもその相手が炭治郎君だなんて、ちょっと、いや、だいぶ、緊張しちゃう。
そんなことを考えながらも、弾む気持ちはどうやったって抑えられなくて。特定の相手からの着信音を好きなものに設定する方法を調べながら、私も教室を後にした。ああ、夜が待ち遠しいなあ。




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