もふもふ。もふもふ。
自分の席に座る善逸の後ろに立った私が両手でその金色の髪をもふもふしている光景は、休憩時間における我がクラスの日常風景だ。
善逸自身もクラスメイト達ももう慣れてしまったのか、私がもふもふし続けていても特に反応せず会話を続けるようになってしまった。
「善逸の髪ってさ、モップみたいだよね」
「は?思う存分もふもふしながら言うことじゃなくない?悪口だよねそれ?やるなって言ってもやるし、やめろって言ってもやめないくせにさ。何なの?」
私の何気ない一言に善逸がぼやいて、昼休みで遊びに来ていた炭治郎が苦笑している。こっちからは見えないけど、善逸いま多分めちゃくちゃ嫌そうな顔してるんだろうな。
いやいやそうじゃないんですよ。言葉が足りなかった点は反省しておりますけども。
「悪口じゃないし。善逸の髪をこうしてると、嫌なことぜーんぶ忘れちゃうの。心の中のモヤモヤがきれいになっちゃうんだよ。ほら。モップみたいでしょ」
実際体育館のやつと色似てるしさ。とは言わないでおく。
「普通さ、『お前の頭モップ』って突然言われたら悪口だと思うからね。気の弱いやつだったら泣いちゃうから。不登校になるやつだから。俺が強い子でよかったね、感謝しろよ」
なーんてぶつくさ言っちゃって、満更でもないのはわかってるんだからね。耳、赤くなってるよ。炭治郎もめっちゃいい顔で笑ってるし。
もふもふ。もふもふ。こうして今日も、心のお掃除は止まらない。