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不動くんと春の深夜2時
camouflage / かなめ




「誰が寝かせるっつったよ」


いつもうるさいわたしたちが揃って静かになるのが、この時期のこの時間帯である。今日もいつものごとく山積みになった課題を終わらせるべく、不動くんと二人でせっせとペンを走らせていた。時たま聞こえる不動くんの気の抜けた欠伸にときめきながらも、課題を終わらせることだけを目標にひたすら頭を動かしていた。家族も寝静まり、時計の針が2時を指した辺りでわたしの課題が全て仕上がった。喜びのあまり、思い切り伸びをしてごろんと傍にあるベッドに寝転んだ。「やったー、やっと寝れる‥」不動くんに背を向けた途端、冒頭の台詞が彼の口からなんの躊躇いもなく飛び出した。


「おい」


不動くんがその場から立ち上がる音が聞こえてすぐ、ベッドがギシリと音を立てた。体を再び仰向けると、見えるはずの白い天井の手前には不動くんが眉間にシワを寄せてわたしを睨んでいた。


「ちょっ、不動、くん、あああの」
不動くんがお構いなしにわたしの顔目掛けて段々と距離を縮めていく。「な、何して、!」鼻先がとんと触れたと同時にぎゅっと目をつぶる。


「寝るのは俺のが終わってからだ」


「っえ」「起きろ」途端、予測していたものとは大分異なった固い感触がわたしの額へ。ゴチン、と盛大な音が部屋に反響した。そっと目を開けると、してやったりと言わんばかりの顔でわたしを見下ろしていた。


「悪い悪い、期待させちまったか?」

「してない!」


わたしの上からどき、手を引かれて体を起こされる。「あと1時間付き合え、名前」そんな風に言われたら襲い掛かる眠気も遠くへ逃げてしまう、よ。