失ってから気付く




それから数時間後



談話室には幹部が全員集まっていた


「んで、これからどーする訳?」
「どうするもこうするもないよ」

「そうよー。私だけじゃ手が回らないわ」
「うむ…」


メルの存在はヴァリアーでの生活の殆どをしめていた

掃除、洗濯、飯等の家事はもちろん書類整理、隊員の増減の人数管理

それらを全て任されていたメルが居なくなった今、普通の生活が出来る訳がなかった


「聞いてんのカス鮫」
「ちょっと黙ってろ餓鬼」

「かっちーん王子餓鬼じゃねぇし」
「十分餓鬼だろうがぁ」

「ベルちゃん、スクアーロっ!今は揉めてる場合じゃないでしょうがっ!」

「ちッ…」
「ちぇー」


たった数時間なのに、もう事が回らなくなる

俺達はアイツに色々押し付けてたんだなぁ


「スクアーロはメルから何か聞いてないのかい?」

「何かってなんだぁ」
「相談とかじゃね?」

「聞いてたらこんなに焦らねぇぞぉ」

「ぬ、確かにそうだな」


大体昨日も普通に茶を飲んだし
確かにいつもと違う感じはあったが何も言ってこなかったしなぁ


「言わなくても何かあったのよ」
「あ"?」

「スクアーロ、あの子が自分から言ってくると思ってるの?」


メルからアイツ自身の悩みを…


聞いた事、ねぇなぁ
常に気をつかってるアイツが言う訳ねぇ

自分の事ばっかりで周りが見えてなかった


情けねぇ…



「とりあえず自分の事は各自でやれぇ!!」


適当に返事を返して談話室を出て行く幹部達の背中を見送った後座っていたソファーの背もたれに体を預けズリズリと滑った


ヴァリアーにまた穴が一つ増えた



そしてそれ以上に抉れた胸の奥が締め付けられた



......
(ホント、自分の事ばっかりだなぁ、俺は…)





存在のデカさなんて知らなかった



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