笑顔の変化



「あ゙?一冊抜けてんなぁ」


例によって例の如く本を漁りに来た俺
古い書物が並ぶその場所は少し埃っぽくてあまり人は寄ってこない筈だった

でも、続きを読もうと取りに来た目当ての本がない
一冊抜けてる

こんな古い本誰が読んでんだぁ?

ベルやルッスはこんな埃っぽい所には近づきすりゃしねぇだろうし
レヴィがこんな本を読むイメージもねぇ

マーモンが金稼ぎにでも使ってんのかぁ?


「…とばして読むかぁ」


とりあえずそこは後で読めばいい
そう思ってその次の本から十冊位一気に取って部屋に持って行く事にした

早くしねぇとメルが茶持ってくる時間に間に合わねぇからなぁ

早足で自室に戻った



が…



「来ねぇなぁ」


いつもならメルがウザイ位の笑顔で紅茶を持ってくる時間なのに
いつまで経っても来ない

確かにアイツに俺と二人で茶を飲まなきゃいけない義務がある訳ではない

でも、毎日毎日来ていた筈の人間が突然パッタリと来なくなるとなぁ…


「ったく、どうしたんだぁアイツ」


仕方なく読みかけの本を閉じて探しに行く事にした

別にアイツが心配だからとかじゃねぇけど気にならないっつったら嘘になるしボスもアイツを気に入ってたからなぁ

ボスが戻って来たときにアイツが怪我でもしてたら…


考えるだけでおぞましいぞぉ





つー訳で、

証言その1


「えっ、メルなら部屋で本呼んでたわよん」


証言その2


「あ?メル?ししっ、アイツ庭でボケーッとしたような顔してたから後ろから抱きついてやったらすんげー驚いてたぜ」

「ベル、少し間違えたらセクハラだよそれ。でもまぁなんか考えてるような雰囲気だったね」


証言3


「ぬ…キッチンに向かっているのを見たが…」






取りあえずキッチン行ってみるか
居るかどうかは定かじゃねぇが他にあてがねぇからなぁ


最後の目撃情報を元にキッチンへと向かってみるとティーカップに紅茶をそそぐメルが居た

俺がジッと見ていたら視線に気付いたらしいメルはまたウザイ位の笑顔を浮かべていた




「紅茶、遅くなってごめんねっ」



いつもと同じ笑顔なのに違う笑顔に見えた
それでもメルに何も聞けなかったのは

ただ俺が怖かったからかもしれない



......

(スクアーロ?どうしたのボーッとして)

(チッ…待ちくたびれたぞぉ)

(ふふっ、ごめんって)


お前…一体何考えてんだぁ?



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