第三話「新生活の幕開け」

「で、ここが俺の部屋だ」
「へぇ〜」
「まぁ、これで大体全部ってとこだ」
「ありがとう、ウーロン」
「おう」
夕瑛は一通り、堂の案内を受け終えた。


【イーアルトリップ!】

第三話「新生活の幕開け」


「そういや 夕瑛、お前妙な格好してるな」
「えっ?あ…うん」

夕瑛が着ていたのは高校の制服。
確かに、ここの雰囲気にはそぐわない格好だった。
ここの人たちは皆チャイナ服なので、余計に 夕瑛が浮いて見えるのだろう。

「修行するなら 夕瑛も動きやすい格好じゃないといけねーよな… 」
「でも私、これしか持ってないし」

体一つでここに放り出された 夕瑛は体以外何も持ち合わせていなかった。

「あ、じゃあよかったら俺のやつ着るか?袖ないから動きやすいぜ」
「えっ?でもウーロンのじゃ私には大きいんじゃ…」
「いや、ちょうど小さくて着てなかったやつがあるんだ。 夕瑛くらいの身長ならぴったりだと思うぜ」
「そうなの?」
「おう、じゃあちょっと部屋入るか。確かこの部屋にあったはずだ」

ウーロンが部屋の戸を開けて中に入るのにつられて 夕瑛も中に入った。
部屋の中は物が少なく小ざっぱりしており、 失礼だがウーロンの性格から想像していた様子とは違っていた。

「えーと確かここに…おっ、あったあった!ほらこれだ」

ウーロンが出した服は、今ウーロンが着ているチャイナ服と全く同じデザインのものだった。

「ウーロンってずっと同じデザインの服なの?」
「まぁな。ここに入門した時の志を忘れないようにと思ってずっと同じなんだ」
「へぇ〜」
「じゃあとりあえずこれに着替えてくれよ。」
「うん。…ウーロンが部屋にいるまま?」
「ばっ…んなわけねぇだろ!俺はちゃんと外に出る!!//」
「だよねー、びっくりした」

ウーロンは顔を真っ赤にして「着替えたら教えろよ!」と言い残して部屋の外に出た。
からかいがいがある。

ウーロンがいなくなった後の部屋で着替えながら、 夕瑛は考え事をしていた。

(しかし…こんな状況とはいえ同年代の男の人の服着ることになるとは思わなかった…わっ、なんか考えたら恥ずかしくなってきた!)

その思いを振り払うように首を左右にブンブンと振り、チャイナ服に袖を通した。
身長148cmの 夕瑛に、その服はぴったりだった。
「ウーロン、終わったよ」
「…おう」

部屋から夕瑛が顔をひょっこり出すと、まだ顔を赤くしているウーロンと目が合った。
先程のことを悶々と考えていたのだろうか。

「すごいねこれ!袖がないから動きやすい!」

夕瑛は腕をぐるぐる回したりピョンピョン飛び跳ねたりしている。

「じゃあチャー先生に見せに行くか。案内終わったってこと言うついでに。」
「うん!」

歩き出したウーロンに夕瑛もついていく。

チャー先生の部屋の前にたどり着くと、ウーロンが先生を呼んだ。

「先生ー、案内終わったぜ」
「おぉ、ご苦労じゃったなウーロン」
「 夕瑛の服が動きづらそうだから着替えさせた」
「これは懐かしいのぅ」
「懐かしい…ですか?」
「ウーロンが入門したときはこれくらいの服を着ておったなぁと思ってな。いやぁ、このころのウーロンは打たれ弱くてしょっちゅう喝を入れておったわい」
「せっ、先生っ…その話はやめてくれ…」
「ウーロンにもそんな時期があったのね〜」
「うるせぇ…」

居心地の悪そうな顔をしてウーロンがそっぽを向く。
今となっては逞しい体をした立派な青年となったウーロンにもそんな時期があったのかと思うと、 夕瑛は微笑ましくなった。
夕瑛の方が年下なのだが。

「そういや先生、 夕瑛の部屋ってどうするんだ? 」
「そうじゃな…あいにく今は弟子で埋まっておって空き部屋がないんじゃよな…」

先生が顎に手を当てて、考え込む仕草をする。その仕草はウーロンそっくりだ。

「ウーロン、しばらくお前の部屋においてやれ」
「「えぇ!?」」

ウーロンと 夕瑛は同時に驚嘆の声をあげた。
思春期の男女を同じ部屋に置いていいのか!?

「どうせ一人でいるには広い部屋じゃろ?」
「いやでも先生…常識的にそれはどうかと思うぜ…」
「まぁまぁ気にするな」

こうして半ば強制的に、ウーロンと 夕瑛が同じ部屋で生活することが決まったのだった。

つづく!

mae ato
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