「フォルカの目ってさ、おれと同じ色だよな」
トパックがおもむろにそんなことを言ってきた。
「…藪から棒になんだ」
「今気づいたから言ってみただけだよ」
くるりと俺に背を向ける。
相変わらず、何を考えているかわからん奴だ。
「…なぁフォルカ」
「なんだ」
「ききたいことがあるんだ」
【瞳】
「フォルカは今まで何人の人を手にかけたんだ?」
少し暗い声色。
しばし沈黙が流れた。
「さぁな、覚えていない」
覚えている必要もないから。
「おれも、人を殺した。だからおれはもう、昔のおれには戻れない」
顔は笑っていた。しかし、痛々しい。
「おれ、もうまっとうな人にはなれないな」
「馬鹿を言え」
ぴしゃりと言い放った。
トパックが驚いて目を見開く。
「お前は私利私欲のために戦っているのではないだろう?…本当のまっとうではない人間というのは、正当な理由なく、または私利私欲のため人を殺すことじゃないのか」
真っ直ぐにトパックの目を捉える。
「お前は少なくとも、そんな人間ではないはずだ」
「でも、」
「うるさい」
「俺の目は」
そこまで言って、トパックが口を閉じた。
「おれの目は、フォルカと同じだ。フォルカと同じ、血を映し出す赤い目」
トパックの緋色の瞳。
「おれの目は血に汚れた」
少しうるんでいる。
やめろ
お前にそんな顔は似合わない
そう思った瞬間、俺はトパックの喉元にダガーをあてがっていた。
「…、ぁ」
「そんなに今の自分が嫌なら500Gで消してやる」
口布の下で口角を上げた。
トパックの表情にうっすらと恐怖の色が滲む。
沈黙が流れる。
「…これでわかったか」
「え…?」
「お前の本当の気持ちだ」
ダガーを鞘に収める。
「お前はまだ、やらねばならないことがある。戦いはそのための手段だ。だから、やめることはできないし、かといって死をもってすれば目的は達成できない」
「…つまり?」
「今は殺しの是非について考えるよりも戦え。」
トパックは少し固まった後、静かに微笑んで目を閉じた。
「そうだな。フォルカの言ったこと、全部あたりだ。そのフォルカがそういうなら、そうしてみる」
「最初からそうしておけばいいものを」
「ごめんって」
笑顔を取り戻したトパックが、いつものように懐いてくる。
「…じゃあおれ、ちょっとムストンさんのとこ行ってくる」
「何か用事か」
立ち上がるトパックに問いかければ。
「武器、買ってくるよ。戦うためのな」
トパックの瞳はまっすぐに俺を向いた。
「…あぁ」
また後でくる、と行って走り去るトパック。
(…全く、俺もずいぶん甘くなったものだ)
少し自嘲気味に笑った。
あの小さな魔道士一人のために助言をするとは。
(あの『狂王』を倒すまで、あいつを見届けてやるか)
煙管を離した口元からこぼれた紫煙が、空へ吸い込まれて消えていった。
この瞳は血を映す紅
君の瞳も赤い色
でも君は違う
君の瞳は
赤く燃える炎
空を照らす明るい太陽だから
どうか自分を見失わないで
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蒼炎の後の方のフォルカとトパック。
フォルカの公式絵の赤目見てやらざるをえなかったんです。
と
で挟んでいただければ背景色が変わります。