京介テンション高い。





氷と氷が揺れる音がする。盆にお茶と氷が入ったガラスのコップとポテトチップスを乗せて廊下を歩く。歩く度にリズミカルな床の音を聞きながら汗でピッタリくっついてしまった髪の毛を掻き分ける。早く自分の部屋へ辿り着きたい、そう思うのはクーラーが利いたからもあるが今日は俺の恋人の松風が初めて家に遊びに来ているからだ。
今日の練習も終わり帰ろうとしていた松風に思い切って家に来ないかと誘ったら行く!と笑顔で喜んでいた。あの時の松風は子犬見たいで可愛かった、なんてドキドキしていたら自分の部屋が見えて来た。

ガラッと障子を開けると俺のベッドで寝ている松風がいた。おいおい、喉渇いたって言った張本人が寝てるってどう言う事だよ。障子を静かに閉めて、ベッドに座る。タオルケットを抱き枕の様にして、本当に気持ち良さそうにして寝ている。無意識に口元が緩み俺は微笑んでいて松風の髪を撫でて、その髪先にキスをした。すると閉じていた目がゆっくりと開き始めた。

「…ん、……つる、ぎ?」
「悪い。起こしちまったな」
「いいよ。あ…俺、いつの間にか寝ちゃってたんだ」

んーっ!と背伸びして、高く上げていた手を勢い良く降ろし、俺に向かってニッコリと微笑んだ。あああああ!可愛い過ぎなんだよお前ぇぇえ!気が付いた時には俺はタオルケットごと松風を抱き締めたままベッドへと倒れ込んでいた。ギュウギュウと締め付ける俺に笑いながら苦しいよぉ、なんて言っている松風の額に唇を付けた。すると松風も俺の額に唇を付け、俺の胸に頭をくっつけて来た。あー俺今すっげぇ幸せ。
「俺、剣城の部屋好き」
「…は?」
「全部剣城の匂いががする」

このタオルケットも、と鼻に近付けて息を大きく吸い込んだ。もう何だよコイツ、天使だろ。

「さっきも剣城の匂いがして安心して寝ちゃったんだ」
「…そうか」
「俺、今剣城の匂いに包まれててスッゴく嬉しい!」
「―――……天馬」
「い、今…名前……んっ!」

天馬の言葉を遮って口付けた。口を開かせ中へと侵入する。逃げる小さくて愛らしい舌を追いかける。チュッと音を出しながら深く噛み付く。自分でも息が荒いのが分かる。今の俺は正しく餌に有り付く獣そのものだ。トントンと胸を叩く音。目を開けると涙目になりながら、真っ赤な顔をしている天馬がいた。名残惜しいが天馬が苦しむ姿は見たくないから、口を離した。銀色の線がツウッと俺達を繋いで、途中で切れた。はぁっと息を吸い込み、お互い呼吸を整える。

「…俺喋ってたのに」
「お前が可愛い事言うからだろ」
「かっ…可愛い事なんか…!」
「俺からしたら可愛い」
「…う、煩い!て言うかいきなりキスしないでって何回言ったら分かるんだよ!もう!」

ポカポカと俺を殴る天馬をはいはいと宥める。暫くすると落ち着いたのか殴るのを止めて俺の服をキュッと握って来た。

「…でも、剣城…き、京介とするキス好き、だな」
「!」
「もう一回してくれないかなぁ…なーんて…」
「だあああ!もうどうなっても知らねぇからな!」
「え…ちょ!うわぁ!」

持ってきたお茶の氷はとっくの昔に溶けてなくなっていた。だが、飲むのはまだまだ後になりそうだ。


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