「――――ねぇ!」
「何だよ…」
「血を吸われた人って吸血鬼の僕になるって本当?」
「はぁ?…まぁ、出来るが物好きな奴しかやらねぇぞ」
「吸われたら死んじゃう?吸血鬼になっちゃう?」
「ンな事ねぇよ。貧血になるかもしれねぇけど数日経てば貧血も治って何事もなかった様に生活できる。それに、吸血鬼にもならねぇし、死にもしねぇ…って、いきなり何だよお前!」

つーかマント掴むな伸びる!と天馬の手を払い除ける。すると今度はその右手を天馬がガシッと掴んだ。冷たい吸血鬼の手が天馬によって温められる。

「決めた!」
「な、何がだよ!」
「俺の血を吸ってよ!」
「………………は?」

吸血鬼は今の自分はさっきのコイツくらい相当間抜けな顔をしているんだろうな、と思った。吸血鬼がそんな事を思っているなんて知らない天馬はキラキラした目で吸血鬼を見ていた。

「いや…お前…俺の話聞いてたか?」
「うん!えっと…人間の血が嫌いだけどお兄さんの病気を救うには人間の血を吸ってそれなりの魔力が必要、なんだよね?」
「あ、あぁ」
「でも知らない人を無理に襲うより、俺一人の血をずっと吸い続ければ良いんじゃない?」
「あのな…。一回に半分の血を吸うんだぞ?」
「数日経てば血の量は元通りになるんでしょ?」
「そう、だけどよ…」
「じゃあ良いじゃん!」

吸血鬼は目が点になった。自分から犠牲になる人間なんて天馬が始めてだった。そしてこれから生きて行く中でこんな事を言う人間は天馬ただ一人だろう。

「変な奴だな。こんな化け物の為に体を張るなんてよ」
「だって君を救いたいんだもん!」
「な…」
「こんなに優しい君をこのまま放っておく事なんて出来ない!君が苦しんでる姿もう見たくないよ…」
「…!」

天馬が吸血鬼に抱き着いて来た。ふわりと香る石鹸の香り。トクントクン、と心臓の音も聞こえる。綿毛みたいな髪が頬に当たる。
どうして自分とは無関係の人間が斯うも悲しんでくれるのだろうか。だが、心が熱くなる。吸血鬼は天馬の背に両腕を回し、抱き締めた。

「…本当に、良いのか」
「うん…。お兄さん、早く治す為にも二人で頑張ろう」
「あぁ…。ありがと、な」
「お礼はお兄さんが治ってからだよ」
「フッ、そうだな」

抱き締める力を緩め少し目線を下に向けると此方を見る天馬がいた。

「俺、天馬。君は?」
「…京介」

よろしくね、京介!と微笑む天馬は満月の輝きを忘れる程綺麗だった。ハロウィンだけではなくて、これからの毎日が楽しみになる予感がした。

だけど今日はお菓子を貰いに行こう。幸せと言う名の甘い甘いお菓子を。

二人は手を繋いで光溢れた街へと楽しそうに走って行った。




end.


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