10/31 吸血鬼パロ
ゴーン、と時計塔の鐘の音色が6時を知らせる。その音は図書館の中にも聞こえて来て天馬はハッと顔を上げ読んでいた本を閉じた。古ぼけた本を最初にあった棚に直して管理人の老人にさようなら!と挨拶をしてから図書館を出た。
外は薄暗く辺りはオレンジ色の南瓜で作られたジャックオランタンが沢山並んでいて、横切る人は人間ではなかった。いや、いつもは人間であるが今日だけは外にいる人全員が怪物になっていると言った方が正しい。何故なら今日は年に一度のハロウィンだからだ。今日の夕方6時に1丁目のパン屋前に集合だったのだが、すっかり忘れていた。
「天馬遅ーい!」
「ごめん!読書に夢中でさ…」
「あははっ!天馬らしいね」
待ち合わせ場所であるパン屋前に全身濃い紫色の魔女の仮装をした葵と真っいお化けの仮装をした信助がいた。
「早く着替えて来なよ!お菓子無くなっちゃうよー」
「うん、そうだね!二人は先に行ってて!俺も後で来るから」
「分かったわ。私達1丁目から順番に回って行くから、見つけたら声かけてね!」
「了解!」
じゃあまたね!と一旦別れを告げて、急いで家へ向かって走り始めた。街を見ているともう家にお菓子を貰いに行っている子が沢山いた。手に持っている籠には可愛くラッピングされたキャンディーや手作りのお菓子が入っていた。早く帰らないと、と走るスピードを速めようとした時だった。一人の自分と同い年くらいの吸血鬼の仮装をした少年が目に入った。そして、彼はみんなが家に訪問していると言うのに暗い路地裏に入って行った。不思議に思った天馬はピタリと走るのを止めて、少年の後を追う様に路地裏へと足を踏み入れた。ジメジメと湿った細い道を進んでいると、突然ドサッと何かが倒れた音がした。物音を立てない様に小走りで走る。すると先程の少年の後ろ姿が見えた。声をかけようと口を開きかけたがそれは直ぐ閉じられた。少年の下に倒れているのは天馬よりも1、2歳年下の女の子で全く動く気配が見えずピクリとも動かない。少年へ目を向けると満月の月に照らされた瞳は血の色をしていて、耳も安っぽい付け耳とは比べ物にならない程尖っていて口から見える歯はまるで刃物みたいだった。
(…嘘、…ほ…本物だ…ッ)
逃げなきゃ、と後ろを振り返った時足元にあった大きめの石に躓き転んでしまった。立ち上がろうとしたが足が竦んで動かない。必死に足を動かそうとしていた時、自分の目の前あった月の光がフッ…と消え、顔を上げると赤い二つの瞳。だが天馬はそれを綺麗だと思ってしまったのだった。
title.誰そ彼