はらはらとさっきまで止んでいた雪が再び地上に落ちて来る。グラウンドは雪に覆われ、キラキラと白銀に輝いていた。こんな天気の中、ボールを蹴り続けていた所為で指先の感覚は殆どない。ジン、と痺れた様な痛み。片方の手で包んでみるけどこっちの手も同じぐらい冷たかった。息を吐けば真っ白に変わる。俺以外誰もいない広い真っ白なグラウンド。一人でボールを蹴っても全然面白くない。だけどまだ練習を続けるんだ、と雪を踏み締めた時に雪村!と俺を呼ぶ声。俺が尊敬してるあの人の声が聞こえた。
「今日も一人残って練習かい?」
「先輩!」
「これから更に冷え込むみたいだし、今日はもう終わりにしたら?ずっと外にいたら風邪引くよ」
「は、はい」
吹雪先輩は困った様に笑って、俺の所へと歩いてきた。そして俺の手を両手で包み込んでくれた。悴んだ俺の手が徐々に温かさを取り戻していく。
「先輩、温かい…」
「君が冷た過ぎるんだよ。全く…僕が声をかけないとずっと練習し続けるんだから」
「す、すみません…。でも俺、早く先輩みたいに強くなりたいんです!」
今の自分じゃ駄目なんだ。もっと、もっと強くならないと。じゃないと何時まで経っても吹雪先輩に追い付けないから。
「雪村」
「……」
「焦らなくても君はどんどん強くなっている」
「え…」
「今の君は昔の僕をとっくに超えているよ」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、ほんと!…ここまで良く頑張ったね。雪村」
俺の頭に吹雪先輩の手の平が乗って、クシャクシャと俺の髪をまるで動物と戯れるみたいに掻き乱した。だけどそれが凄く嬉しくて吹雪先輩の明日も一緒に頑張ろうね、と言う言葉に思わず笑顔で頷いた。
「早く中に入ろう。僕が飛び切り美味しいココア作ってあげる。…あ、ご褒美に生クリームも乗せちゃおうかな」
ふわふわ微笑む吹雪先輩の後ろを歩きながら、俺はやった!と喜んだ。
雪はまだ止みそうにない。
title.ぱっつん