真っ赤な苺が乗ったショートケーキ、シュガーパウダーが大量に振り撒かれたガトーショコラ、大きな栗が乗っかった紫芋のモンブラン、様々なフルーツと生クリームがふわふわなスポンジケーキに包まれているロールケーキ。この4つを天馬は休む事なくパクパクと口へと運ぶ。そんな天馬を京介は顔を引き攣らせながら見ていた。彼は甘さ控え目なベイクドチーズケーキを頼んでいたが、全く食べる気配が見えない。

「京介、チーズケーキ食べないの?」
「…お前見てたら胸焼けしてきた」

食って良いぜ、とチーズケーキが乗った皿を天馬へあげるとパァッと言った効果音が付く様な笑顔を見せた。天馬はケーキが大好きだ。ケーキ、と言うか甘い物が大好きで、デートの時は毎回と言っても良いぐらい喫茶店でケーキを食べに行く。一方甘い物があまり好きではない京介は、甘ったるいケーキを大量に食べる天馬をいつも気持ち悪そうに見ている。彼曰くケーキは砂糖の塊らしい。

「良くそんなに食って平気だな。気持ち悪くならねぇのか?」
「えー?これくらいじゃ気持ち悪くならないよ」
「毎回思うけどよ、本当甘いの好きだよな。女子かお前」
「む、最近は甘い物好きな男子が増えてるんだよ?」
「へぇー、そりゃ良かったな」
「全然思ってないでしょ!」
「あぁ、思ってない」

ちょっとムキになって口をへの字にさせる天馬と無表情で頬杖を付いた京介はお互い自分の恋人の顔を見る。暫くしてプッ、と吹き出して笑った。

「あはははは!京介ちょっと笑い堪えてたでしょ!」
「くっ…くく…お前こそ口元震えてたっつーの!」

クスクスと微笑み合う二人。気が付けば天馬のケーキを食べる動きが止まっていて京介の食わねぇのか?の一言でまた天馬の手が動き出し、ショートケーキを刺した。真っ白な生クリームから小さく刻まれた苺が見えた。不意に天馬、と名前を呼ばれ目線を上げれば天馬に向かって少し体を乗り出し口を開けた京介がいた。

「一口」
「え、甘い物嫌いなのに?」
「何か食いたくなった」
「これショートケーキだよ?絶対生クリームで気持ち悪くなるって」
「良いからホラ、早く」
「んー、はい」

自分の口へと入れようとしていたショートケーキは京介の口の中へと入っていった。生クリームの甘さと苺の甘酸っぱさが口内に広がった。そして次第に京介の顔が難しい顔へと変わる。やはり甘い物は無理だった様で無言でカフェラテを飲んだ。ちらりと天馬を見るとだから言ったのにー、と笑っていた。トクン、と胸が高鳴り顔が赤くなって行くのに気が付き、慌てて口元を袖で隠して横を向いた。

「どうしたの?気分悪くなった?」
「やっぱ甘ぇな…」
「え?あ、ケーキ?そりゃショートケーキは甘い生クリーム沢山使ってるからね」
「…まぁ、それも甘いけどな」
「へ?」

天馬に対する自分は世界中に存在するケーキよりも甘ったるいんだろうな、と思いながら京介は残ったカフェラテを一気に飲み干した。



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