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僕の永遠をあげよう
2 / 2 「そ、そうだ!ユキ本当に人気者だよね!雑誌とかにも一杯出てるし」 「読んでくれてんの?」 「うん。ちゃんとチェックしてるよ。買ってないけどユキの載ってるページだけ立ち読みはしてる」 「まあ、それでも読んでくれてるんなら嬉しいよ」 「あ、でもこの前の女性モデルさんと対談したやつは買ったよ。なんかユキがあまりに自然だったから買っちゃった」 梨子はベッドから立ち上がって本棚に収納されていた一冊の雑誌を手にとってからまた由紀也の隣に座る。そして由紀也が載っているページを開いて見せた。 「ああ、これか。相手のモデルさんがあまりに素だったからつられてさ。それに同い年だったし、かなり話が弾んだんだ」 「うん、楽しそうだなって思いながら読んでたよ」 雑誌に写る由紀也はどのショットも笑顔で、それが嬉しくて読んでいた梨子も知らない間に笑顔になっていた。 「でもさ、こんなに綺麗なモデルさんとか女優さんと一緒にお仕事してさ、その……好きになったりとかしないの?」 「ないよ。だって俺好きな人いるもん」 「へぇ。そうなんだ…………って、え?」 あまりに由紀也がさらっと言うものだから、梨子はうっかり流しそうになった。しかしよく考えてみれば由紀也の発言は流していい分類のものではない。 「え、ちょ、待ってユキ」 「ん?」 「それ、あたしに言っていいの?」 「いいんじゃない?梨子だし」 「あたしがマスコミとかにリークしたらどうするの?!」 あの朝霧由紀也の恋愛事情なんてマスコミが食いつきそうなネタなのに、こんなにあっさり漏らしてしまっていいのだろうか。 「別に言ってもいいよ。でも、その場合は梨子も必然的に巻き込まれることになるけど。いいの?」 「は?」 「俺の好きな人」 そう言って由紀也は梨子を指差す。動揺した梨子は後ろを振り返ってみるも誰かがいるはずもない。再び由紀也に向き直ると、由紀也はいつも通りニコニコしながら、 「梨子が好きだよ。俺、これ言うために帰ってきたようなもんだから」 梨子の頭は大混乱状態だ。まさかの由紀也からの告白に思考がついていかない。もしかして由紀也は家族感覚の好きを言っているのかとも思ったが、梨子の考えていることは由紀也にはお見通しなようで、 「家族の好きとかじゃないからな。女の子として梨子が好きだよ」 あっさりと否定されてしまった。 「う、嘘だ。何かドラマのリハーサル?」 「俺、すごい本気なのに。信じてくれないんだ?」 「だって……」 幼なじみとはいえ、あの朝霧由紀也に告白されてあっさりと受け入れられるわけがない。 「ほんとは男ならここで実力行使に移りたいんだけど」 「じ、実力行使って……?」 「無理矢理にでも押し倒してみたり」 「お、おし……?!」 まさかあの由紀也からこんな発言が飛び出すなんて。昔は絶対にこんなことは言わなかった。梨子は時の流れを感じざるをえなかった。 「でも俺にはそういう趣味ないから。最初は梨子とちゃんと両想い確認してからやることやるって決めてんの」 「や、やることって……」 「それは勿論」 「いいいい、言わなくて良いから!」 さっきから顔が熱い。それもこれも由紀也のストレートな発言内容が原因なのだが。その由紀也はというと、梨子の右手に自分の指を絡めて、梨子の目をじっと見つめている。 「さっきはさ、俺は誰のものでもないって言ったけど……」 「……うん」 「梨子にならあげてもいいよ」 「な、何を?」 「俺の全部」 一瞬、時が止まったような気がした。由紀也の目から視線を外すことができない。強い意志を持った由紀也の目から、彼の言葉を信じざるをえなかった。 「いいの?その……事務所とか、恋愛は禁止なんじゃないの?」 「別にいいんじゃない?はっきり禁止されてるわけじゃないし」 「そ、そうなんだ」 「第一、梨子と離れてからの方が仕事に支障きたしてるよ」 「え?」 「梨子に彼氏できてたらどうしようとかそんなんばっかで、もう全然集中できないこともあるんだから」 梨子と離れてから数年、自分の知らない間に梨子がどこの馬の骨とも知らぬ男と恋仲になっているのではと思うと由紀也は気が気でなかった。 「仕事をプライベートに左右されるなんてプロ失格だけど、梨子は俺にとってそれだけ大きな存在なんだ」 だから、と言いかけて由紀也は一度深呼吸をした。 「俺と付き合ってくれる?」 一拍置いて、梨子は「私も好き」と言いながらゆっくりと頷いた。それを見た由紀也は本当に嬉しそうに微笑んだ。 「絶対に大事にするから」 「うん」 「またしばらく会えなくなるだろうけど、できるだけ電話もメールもするから」 「うん。私もいっぱい電話もメールもする」 「俺、たぶん梨子からのメールいっぱい保護すると思う」 そう言って笑う由紀也につられて梨子も笑いをこぼした。 僕の永遠をあげよう 「めでたく両想い確認もしたし」 「うん?」 「やることやってから帰るよ」 「ちょ、ユキ!」 (Title → たとえば僕が) (2010/06/22-2010/06/27)
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