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(C)Yuuki nanase 2010 - 2013



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10000hit記念祭 1/2
 




「準備出来たら早く出て!」


あわただしい部室。そして人一倍あわただしい私。今日の放課後の部活は他校での練習試合。なんで平日にするかな。まぁ、一駅しか離れてないからいいんだけど。

よし。必要な荷物は全部監督車に積んだし、部員も全員追い出したから、あとはマネージャーの私たちが移動開始するだけ。


「じゃ、みんな監督車に乗って移動してね!」

「え?理沙子先輩は?」

「私は電車移動!定期あるから交通費タダ」


今日行く学校は私の通学定期の範囲内なのです。そもそも監督の車に荷物を載せたら人が乗れるスペースがほとんどないし。


「早く!監督を待たせない!」

「はい!」


後輩マネージャーたちを先に行かせ、私は部室内を再チェックしてから部室を出る。鍵を閉めて戸締り確認。よしオッケー。


「急がなきゃ」


部員は校門に全員揃ったら先に現地へ行くようになっている。部員が遅れたら大変だけど、マネージャーは一人ぐらいいなくてもそこまで問題ではない。

鞄を肩に掛けなおして駅まで走ろうとしたとき、部室の陰から姿を現した人物を見て私は驚いた。


「おせーよ」

「総二(ソウジ)、なんでまだいるの?!」


なんで総二がここにいるわけ?先に行ったはずでしょう?


「何って、理沙子を待ってたんだよ」

「ちょ、スタメンがこんなとこでのんびりしてないでよ!早く行かないと」

「わかってるよ。だから鞄よこせ!」

「え?!」

「走るぞ」

「ちょっ、まっ」


総二は私から鞄を半ば無理やり奪うと自分の肩にかけて、私の手を引いて走り出した。


「ちょ、転びそう!」

「早く行け、っつったのは理沙子だろ!」


確かにそうは言ったけど。それは一人でさっさと行けという意味であって、間違っても私を道連れにしろという意味ではないわけで。

コンパスの差に加えて、私と総二の走るスピードが違い過ぎて引っ張られている私はいつ足がもつれて転ぶかとヒヤヒヤ。


「転んだら抱きとめてやるから!」

「馬鹿!そういう問題じゃないでしょ!」


一瞬ドキッとしたけど、大事な選手を私の転倒に巻き込んで怪我させるわけにはいかないでしょう。


「それに俺と手繋げて良かったじゃねーか」

「意味わかんない!自意識過剰発言はやめてください!」


総二は自分に自信があるからかよくこういう発言をする。確かに顔はいいからファンは多いみたいだけど。試合のたびにウチの学校の女子生徒とか他校の女子生徒も総二を見てキャーキャー騒いでる。


「なんだよ、手つなぐのが嫌だったらお姫様抱っこでもしろってか?」

「誰もそんなこと言ってないでしょう?!先に行けって言ってんの!」

「それはできない相談だな!」

「なんでよ?!」

「理沙子を一人で相手校に行かせたくないから!」


なんで?!私は別に方向音痴でもなんでもないし。それに今日行く学校だって去年も行ったことあるから場所知ってるし。


「意味、わかん、ない!」


あ、やばい。そろそろ息切れしそう。駅遠いよ!もう駅がこっちにくればいいのに!


「あっちの学校マネージャーいないから」

「はぁ?」

「前もマネージャーいない学校に行った時あっただろ?!」

「え、なに?」

「そんとき理沙子が相手の学校の奴に話しかけられてたから」

「そうだっけ?!」


そんなのいちいち覚えてないよ。相手の学校の選手とは一応挨拶するときもあるけど。


「なんか嫌だったから!」

「……は?」

「理沙子一人で歩かせたら声かけたくなるから!」

「ど、どうい、う意味よ?!」

「理沙子はウチの自慢の可愛いマネージャーだから」


なっ?!まさかの発言に声が出ない。いや、もうさっきから息切れしてまともに声出てないけど。信じられないんですけど!信じられないけど……やだ、なんか嬉しい。


「だから、もし皆に置いていかれても、格好良い俺と登場したら声かける気もなくなるだろ?」


なんだか感動が半減しました。さりげなく自分褒めたよ。いや、さりげなくないか。堂々と俺様格好良い発言したよ。





 
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