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(C)Yuuki nanase 2010 - 2013



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10000hit記念祭 1/2
 




「理沙子に頼みがある」

「なに?」

「真幸(マサキ)。理沙子への用事は俺を通してからじゃないと」

「真人(マサト)は私のマネージャーか。いいよ、どうしたの?」


ウチの居間で理沙子とお笑いDVD見てたら、俺の双子の弟の真幸がやってきて理沙子に頼みごとがあると言ってきた。真幸は言いにくそうにちょっと躊躇ってから口を開く。


「……コンビニで雑誌を買ってきて欲しいんだけど」

「雑誌?」

「なになに。いかがわしい雑誌?」

「アホか。女が読みそうな雑誌」


俺と理沙子は揃って首を傾げた。なんで真幸がそんなものを欲しがるのか問い詰めたら、どうも彼女が読んでいた雑誌に載っているネックレスを誕生日にあげたいんだってさ。で、忘れないようにその雑誌を買っておきたいんだって。

なるほどね。真幸は俺と違って硬派だから、そういう本を買うのに抵抗があるんだろうね。俺?俺は全然平気。女の子の本だろうがエロ本だろうが堂々と買えるよ。

昔から俺たちは正反対。クールな真幸とヘラヘラした俺。昔は色んな女の子の間をフラっとしてたけど、今の俺は理沙子一筋なんだよ。その理沙子と真幸はもう何度も会ってて、今じゃ本当に兄妹でもおかしくないぐらい気心知れた関係。


「じゃ、ちょっくらひとっ走り行って来ますわ」

「悪いな」

「いいよ!お駄賃も貰っちゃったしね」

「理沙子!俺ダッツのバニラね!」

「真人の分はねぇよ」


そして十五分ぐらいで理沙子は帰ってきて、例の雑誌を受け取ってから真幸はさっさとバイトに行ってしまった。理沙子は俺の隣でダッツのイチゴ味を美味しそうに食べてる。


「真幸くんの彼女は幸せだねぇ」

「理沙子は?」

「私も真人とお付き合いできて幸せ」

「もー嬉しいなぁ」

「わ!今アイス食べてるから!」


俺は思わず隣に座る理沙子を抱きしめた。もー可愛いなあ。俺も理沙子といられて幸せだよ!


「理沙子すきだよー」

「知ってるよー。だけどイチャイチャはアイス食べ終わるまで待ってね」

「俺よりアイス優先なの?」


それって随分とひどくない?俺泣いちゃうよ?


「あともうちょっとー」

「早くー」

「最後のひとく……あ!コラ真人!」


俺はパクッと理沙子のスプーンを口に入れた。うん、美味しい。いつもはバニラだけど、たまにはイチゴもいいかもね。


「今チューしたら間違いなくイチゴ味だね」

「私のアイス横取りしたから、しないからね」

「えぇっ?!たったの一口でしょ?!」

「途中の一口と最後の一口は全然ウェイトが違うでしょ!」


あーあ、怒っちゃった。だけど、だけどね。そんな風にプリプリ怒ってる理沙子も可愛いなとか思うわけ。


「理沙子めっちゃ好き!」

「うわっ、全然反省してな……ちょ、押し倒すな!私は怒ってるんだから!」

「今度、イチゴ味と抹茶味ダブルで買ってあげるから!どうせ今日もちょっと迷ったんでしょ?」

「なんで知ってるの?!」

「あ、図星だ!」


ウチとコンビニは往復で五分ぐらいしかかからないのに。それなのに十五分もかかったんなら、ねぇ。


「もー!早くどいてよ!」

「あ、ソファの上じゃ嫌だった?ベッドの上がよかった?」


もうそれならそうと言ってくれればいいのに。理沙子は恥ずかしがりやさんなんだから。


「ちょ、しないからね!私今日六限だけ出るんだから!」

「まだ時間あるじゃん。それにほら、さっきからチラチラ理沙子のブラが見えて」

「見えてるのは真人がボタン外してるからでしょ?!」

「おっと、手が滑った」


うん仕方ない。手が滑ったんだから。これは事故だから仕方ないじゃないか。


「真人!」


* * *


「アイス買って行こうかな」


今日は理沙子がウチに遊びに来る日。理沙子はもう一つ授業が残ってるから、俺は先に家に帰って待ってることにした。数ヶ月前にアイスが原因でおあずけをくらってから、俺らはアイスを食べたい時には必ず二つ買っていくことにした。

俺は学校から家までの途中にあるコンビニに立ち寄って、最近の俺と理沙子のブームであるソーダ味のアイスを二つ買ってからマンションへ向かう。


「あれ、竜じゃん。今からお出かけ?」

「ちわっす」


エントランスを抜けてエレベーターのボタンを押したら、ちょうど到着したエレベーターからお隣りに住む竜が降りてきた。


「高校生に夜遊びは早いよ」

「違いますよ。ちょっと学校に忘れ物っす」

「よしよし。大人になったら俺が夜遊び教えてやるからな」

「楽しみにしてます」


行ってきます、と言ってエントランスを出て行った竜を俺は見送ってからエレベーターに乗って自分たちの部屋がある階へ。

廊下を少し進んだところにあるドアの前でポケットから鍵を取り出す。部屋の鍵を差し込む前にドアノブを回してみたらすんなり回った。あれ、真幸いるんかな。


「あれ真幸。帰ってたんだ」


家に帰ると真幸がちょうどリビングにいた。俺はすぐさまアイスを冷凍庫に収納した。これでよし。


「これからバイト?」

「おう」

「そんなバイトばっかりして彼女とちゃんと会ってんの?」

「いや、別れたし」


は?別れた?ちょちょちょっ、ちょっと待て!そんなの聞いてないし。






 
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