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10000hit記念祭
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「ご存知の通り」 「なぁなんで?真幸のこと嫌いになった?」 「っ……、嫌いにはなってない」 「だったら何で?」 こりゃまぁ、よく突っ込んできますこと。 「不安だったから。真幸が私を好きな自信がなかったから」 それで、そういう話をしたらこじれちゃったんだよね。 「真幸はさぁ、好きとか愛してるとかなかなか言わないだろ?俺はガンガン言うけど」 「真幸はね、そうだね」 「だけど、それでも理沙子ちゃんはちゃんとわかってくれてるんだと思ってた」 わかってるつもりだったよ。だけど、それが本当にただの“つもり”だったら?そう考えたらキリがなくて、やっぱりはっきり言って欲しいこともあるよ。 「それもあるけど、バイト先も教えてくれないし。最近バイト三昧で、せっかくのデートもドタキャンばっかりだったし」 「バイト先教えない理由は俺は知らないけど、バイト三昧の理由なら知ってるよ」 「え?」 そう言って真人くんが私に差し出したのは一冊の古いファッション雑誌。 「折り目ついてるページあるっしょ?開いてみ?」 「折り目?」 雑誌の側面を見ると確かに折り目がついていて、そこを開くとそのページの一部分にペンで丸がかかれてあった。 「この雑誌ね、真幸の部屋から失敬してきた」 「え、真幸の?」 どうして真幸がこんな女性向けファッション雑誌なんて持ってるんだろう。 「自分で買いに行くの恥ずかしいって言うから、俺の彼女にわざわざ買いに言ってもらったんだけどね」 何かを思い出したのか、真人くんはなにやら楽しそうだ。 「問い詰めたら、そのネックレスを理沙子ちゃんが欲しがってたからなんだって」 「え、私が……?」 そういえば、前に真幸と私の部屋でまったりしてたとき、私はこの雑誌を見ていて、「このネックレスすっごい可愛い」とか言いながら値段を見て凹んだ記憶がある。 「理沙子ちゃんの誕生日にあげたかったんだって」 私の誕生日はもうすぐだ。そっか。だからあんなにバイトして……。それなのに私はなんてことをしてしまったんだろう。 「俺が言うのも何だけど、真幸の一番は間違いなく理沙子ちゃんだよ」 「……っ、うん」 うわっ、どうしよう。泣きそう。うれしいのと、今更知って後悔しても遅いのと。もうわかんないや。 「おせっかいついでにもう一ついいこと教えてあげるとね、真幸のバイト先も実はこの近くなんだよ」 「え、本当?」 「うん。もう終わってるんじゃないかな。そんなバイト上がりの真幸と俺はそこの駅の隣のコンビニで待ち合わせをしています」 「うん」 「あ、わかってないなぁ。だから、俺の代わりに理沙子ちゃんが行ってよ、ってことなんだけど」 「えぇっ?!」 なんで?どうして?!私たち別れたんだよ?!真人くんは何を言ってらっしゃるの? 「こんなことで終わりだなんて嫌でしょう。俺だってやだよ」 「真人くんも?」 「そう。真幸と結婚する子は俺の義妹になるわけ。義妹にするなら理沙子ちゃんじゃないと俺やだもん」 「け、結婚って!」 ちょ、なんで話がそこまで飛んでるの? 「第一、俺が今まで見てきた真幸の彼女の中で理沙子ちゃんだけだよ。真幸がここまで彼女のために何かしようとしたの」 「……でも」 「ほら早く行って!二人はまだ終わりじゃないよ。むしろこれから」 真人くんは私の背中をパシッと叩いた。 「真人くん」 「なに?」 「ありがとう」 「お安い御用ですよ。未来の弟夫婦のためだからね」 ニカッと笑った真人くんに見送られて私は走り出した。 真幸にいっぱい伝えなきゃいけないことがあるよ。「ごめんね」と「ありがとう」と「大好き」と、他にも色々なことを伝えたいの。 もう二度と信じることを諦めたりしないから、 だから、 終わるなんて言わないで 「真幸くん。もう一度私と付き合ってもらえませんか?」 「……よかった。ネックレス無駄になるとこだった」 「え、もう買ってたの?」 「そう。って、誕生日まで秘密にしとこうと思ってたのに、この際仕方ねぇか。今日、ウチ来れば?前倒しでもう渡したいんだけど」 「行く!」 (2010/05/13-2010/05/26)
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