たとえ万物に終わりがあるとしても、僕は死の分かりきった生を全うする事を無駄だと思わない。
叫びを綴った紙が燃えて灰になるのと、命が燃えて消えるのはどこか似ている気がする。僕はただ叫びたい。叫びは元来形にならないものだ。そして僕は最初から、形で残る事なんて求めていやしない。
「僕は、炎のように生きたい。それを望んでいる限り、僕は燃えようとしてエネルギーを求め続ける事が出来る。いろんな人に出会うことはそのまま僕自身のエネルギーになる事をここ数年で知れたよ」
炎はいつか消えるけど、消える日のために燃えてるんじゃない。風に揺らぎや冷気に耐え、それでもその瞬間に燃えているからこそ炎でいられる。
「しずまらず行き先てらすほのあかり刹那のときを輝けるかな」
僕はそんな生き方がしたい。
「サークル誌はいいっすけど、題名とか決まってるんすか」
「あー、確かに……」
「候補なら、無くもないよ」
僕は真っ白な障子からこぼれんばかりの山並みを思い出していた。
「『紅葉』なんて、どうかな」
あれが秋に燃えだしたらきっと絶景なのだろう。
「僕らは時に暖かく時に真っ赤に燃える思いを胸に今日を生きてる。それを燃えるような紅葉に例えてみた」
そして陽瑞の『陽』、灯火野の『灯火』。そして……。
(もちろん忘れちゃいないさ、『緋』穂さん)
「紅葉葉よ深緋に染まれ太陽が燈灯し心を焼かん」
陽瑞さんの歌は一段とハリのある声で歌われた。
「その頃にまたここに来れば……いい写真撮れますよ」
「写真?」
「表紙が無地じゃ、つまらないっすよ。どうせなら毎年ここで紅葉撮影して、表紙にしましょうよ」
夏の陽射しに負けじと輝く、同じ年月を生きた後輩の顔が眩しい。
……気になるのは僕の頭が硬いからなのだろうか。
「小玉、やっぱり敬語は」
直さないか、と言いかけてちらっと陽瑞さんの方を見た。
「私も、直したほうがいいでしょうか?」
忘れてた、なんて言ったらさすがの陽瑞さんも怒るのかな?
「……いや、いいや」
「へへ、なんとなくこの方が喋りやすいんすよ。あざっす」
「まあまずは……運転、頑張ろう」
緩んだ口元を隠すように頬杖をつきながら、眼下を通り過ぎるベコベコに傷ついた白い乗用車を眺めていた。