あかりがまぶしい
10.二年生夏
64
 左良井さん。君は今、どんなところにいますか? ベッドのように暖かくて柔らかいところだろうか、それとも夜の海にように暗くて冷たいところかな。
 眠りにつく前に僕は、先ほど別れた彼女に話しかける。ここにいない彼女はもちろん、答えてはくれない。
 今日起きたことを、今日した会話を、今日歩いてきた道を、僕は何でもなく思い出すことができるよ。やろうと思えば、左良井さんと出会ってから今日までのことも。でも君には消したい過去がある。割り切れない、感情に突き刺さったいろいろなものが、左良井さんの体や心を縛り付けている。
 どうして今の今まで気付けなかったんだろうって、思う。
『一人でも生きていけるくらい、誰にも干渉されないくらい、強く、強く、強く……強くなりたい……っ』
 泣きながら言った君の言葉が、あの日から僕を簡単に眠らせてはくれなくなった。それはいつの日か、君の本当の支えになれるとしたら、どんなに幸せなことだろうという希望に変わった。
 僕がいる、だから生きていてほしい。そんなふうに言えたら、どんなに楽だっただろう。
 でも、高々僕なんかに、誰かが一生を終えるか続けるかの理由になるほどの価値があるなんて、僕自身が思っちゃいない。
 例えば神様みたいな何かがすべての人を傷つける側≠ニ傷つけられる側≠ノ分けたとしたなら、僕は絶対に前者だ。今までも、今もきっと。
 そんな僕だからこそ、常に地球の半分を包む闇に、そしてその神様みたいなものに願う。
 左良井さんが抱える真実は、全て僕が背負います。
 だから左良井さんには、誰よりも幸せな夢を与えてください……と。
 僕はその日、左良井さんを抱きしめながら左良井さんに殺される夢を見た。
 鋭利なナイフは深く僕の腹に刺さって、それは不思議と痛くなかった。

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