「お前は何も悪くない」
そして歪んだ世界が流れ出す。僕はたまらず目をつむる。
「怖いかもしれないけど、おせっかいかもしれないけど、俺のことを単に”俺"として見てくれたように、お前も過去とか気にしないでお前自身だけを見た方がいい」
目をつむると、少し痛みが和らぐような気がした。その言葉はじめじめした布団を少しも乾かしてくれないけど、どうしてか居心地を良くしてくれた。
優しい永田は、やっぱり僕を裁いてはくれなかった。
「話を聞いたら、左良井さんはなんて思うだろうな」
なんて思うか、なんて永田に聞いたって仕方ないのに。永田は答えてくれなかった。
そう思っていたら、彼はフッと表情を緩めて自分用のお茶を一口飲んだ。
「……やっぱお前変わったよ。誰からどう思われようと関係ないって思ってたような奴だったくせに」
「そうなんだよ、それは僕でもびっくりしてる」
「いーんだよ。みんなそうなんだから」
みんなもこんな風に悩んでいるのか。それでいてあんな能天気な顔でお気楽に生きていられるのか。
「変わりたいよ。どんな風にかはうまく思い描けないけど、今の僕は変わらなきゃいけない」
もしかしたら一番能天気なのは、僕だったのかもしれない。
「手紙があるぞ」
封筒をくるりと返した永田の笑顔が引きつった。大量の写真、それも実家から転送された写真の、その送り主。
「ご丁寧なやつだな、相変わらず」
見なくてもわかっていた。これら全ては、瀬崎が実家に送ってきたものだと。