「僕は沢山の人を傷つけた。左良井さんも傷つけた」
どうして僕だけが裁かれないのかと、何度思ったかわからない。
「好きで傷つけようと生きてるわけじゃないだろ。……不器用なだけだ」
永田は僕の話を最後まで聞いてくれた。不器用だと、ただそれだけを口にしてあとは何も言わなかった。
不器用。それだけで許されることでは到底ありえない。でも、器用か不器用かと言われたら、少し悩むけど後者なんだと思う。
「その話、他に誰が知ってる?」
「大学内では、永田にしか話してないよ」
「左良井さんにも、可那子ちゃんにもか?」
可那子さん、遠い記憶から呼び出されたような名前だ。
「……ああ、してない」
「お前が気づいてるかどうかはわからんが、お前が話をするときは必ずと言っていいほど『左良井さん』だ。可那子ちゃんと付き合ってからもお前は左良井さんのことばかり気にかける。それがどういう意味か、自分の本心自分でわかってるだろ。ガキじゃあるめえ」
目を薄く開け、ため息と口元だけの微笑みを肯定の返事にかえた。
「お前の話、誰よりも先にお前の口から俺が聞けたことは光栄に思う。だから、お前の一番の友人として言うけど、」
恥ずかしげもなく"一番の友人"などと抜かす目の前の金髪男が、どこか現実離れして僕の目に歪んで映る。