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「にぃちゃ、にいちゃ」
「どうした十四郎?」
最近走れるようになった十四郎はいつも俺の後をついてくる。十も歳の離れた弟だから 可愛くて可愛くてしょうがない。
簡単に抱き上げることのできる体をひょいと持ち上げて腕に納めるときゃあ!と嬉しそ うに声をあげた。
「おもち!」
「餅…?」
「はっぱ!」
「はっぱ…あぁ、柏餅のことか」
もうそんな時期か、とトシもまたゆるりと笑みを浮かべた。
今日はこどもの日だ。
この日は坂田家(調理実習で習ってからは主に銀八)が作って持ってきてくれる甘さ控え めな柏餅を食べるのが習慣になっていた。
そして他にもうひとつ。俺とトシの誕生日でもある。
俺は14歳に、十四郎は4つになる。あんなに小さかった十四郎がこんなに大きくなった のかと思うとじん、と感動が胸に広がった。
「十四郎は餅好きなのか?」
「すき!うにゅってしててすき!」
「うにゅってお前…」
食べ物はおもちゃじゃないんだぞ、と思うけれどそこは言わずに苦笑だけ返した。
「きっともうすぐ銀八が持ってきてくれるんじゃねぇか?」
「ぱっちゃおもち?」
「いや…クク…そう、ぱっちゃおもち」
あいつはどっちかというと綿菓子だと思うけれども。
それもまた発することなく内心で笑うだけに留めた。
「いっぱい食べような、餅」
「たべるー!」
腕の中で笑い声をあげる弟を見つめて、またひとつ、笑みをこぼした。
おめでとうを愛して止まない君に
-END-