新しくこの世に生まれてきた命はとても小さくて。
それでも確かに命の温かさ、力強さを感じられて。
腕の中で小さい動作ながらも手足を動かしている様に、自分が何としてでも守ってやらなければと強く思った。
例えどんな苦難が待ち受けていようと、自分は、自分たちだけはこの子の幸せのために辛苦を乗り越えてみせる、と。





「トキちゃーん、おとーさんですよー」

先程からトキを寝かせているベビーベッドに張り付いて離れない銀時に十四郎はソファに腰掛けて苦笑する。
気に入りのコーヒーを口にしながら、幸せだなぁと笑みをこぼした。

長男のシキが生まれて三回目の誕生日を迎えた年に、坂田夫婦は新たな命を授かった。
そろそろシキにも兄弟がいたほうがいいのではないかと考えだしていた時期だったため、ことさら喜びは大きく、幼いシキもまた弟か妹ができることが嬉しかったようで、まだ拙い言葉を必死に紡いではしゃいでいた。

また家族が増える。
それが嬉しくて、けれど、やはりまだぬぐいきれない小さな不安も混ざり込んで。

強制的に仕事を減らされたためにできた空き時間でぼんやりと最悪の事態を考えることが多くなっていた。
もし、両親が二人とも男だということでこれから先二人が苦しんだら?
それ以前に自分が死んでしまったら?
そもそも、俺はこいつらを立派に育てられるのか?
次から次へと不安は出てきて拭えない。





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