高土/ポコ様 | ナノ

10000hit企画

そしてこれからも


初めてこの見世に来たのは15の頃だ。
父親に廓遊びの一つも出来ないでどうすると言われ連れられたのが始まり。
そしてまだ場馴れしない晋助のために宛がわれたのが当時はまだ姉女郎付きの禿をしていた十四郎だった。

「懐かしいなァ。あの時はもうちぃと可愛げがあったのになァ?」
「るせぇ。可愛さを求めるなら他を当たりやがれ」
「クク…そんなことは誰も言ってねぇだろうが。」

クスリと晋助が空気をゆるく揺するとそれにあわせて手持ちの煙管から立つ紫煙もまたゆるりと揺れた。

幼き日に晋助に宛がわれた禿は吉原にいながら男児であった。
見目麗しくスッと伸ばされた背筋に誰もが喉を鳴らすほどの美丈夫。
それを晋助と晋助の父親もすこぶる気に入り、それ以来8年経った今でも馴染み客としてふらりと足を運んでいる。
そして今宵、晋助は十四郎を身請けすることになっていた。

「まさかこうしてお前を抱く日がくるたぁなァ?」
「テメェがもの好きだったからだろうが。嫌なら今すぐやめろや」

そう文句をいう十四郎の唇にはうっすらと紅が引かれており、より一層美しさを際立たせている。
ふぃとそっぽを向いたのと同時にふるりと波打った長い黒髪に晋助はうっすらと笑みを浮かべた。

十四郎にとっての初めての客が高杉親子であり、十四郎をたいそう気に入った二人は十四郎が他の客を取らぬようにとその日からずっと囲い続けている。
けれど晋助が関東の方へと遠征にでることが決まったのをきっかけに十四郎の身請けが決まった。

「だれが手放すか。簡単に手放せるような奴を八年間囲うわけねぇだろうが」
「だったらなんで囲うだけだったんだよ。さっさと身請けしてくれりゃあよかったじゃねぇか」
「そうしたかったのは山々だったんだがなぁ?どうもあのクソ親父がテメェに興味があったみてぇでなァ。変に手ェだされちゃァ困るからな」
「それは見世でも一緒だと思うんだが」
「ここなら後ろから手を回しゃあなんとかなるだろうが。今回の遠征で新居を構えることができたんでなァ。月に一度来れるかわかりゃしねぇんなら、手元に置いちまった方が安全だという考えになったわけだ。」
「悪ぃ、話がバラバラ過ぎてついてけねぇんだけど」

十四郎の薄い肩を抱きながらいう晋助にため息をつきながら引き寄せられるままに頭を晋助の肩口に預ける。
晋助はくつりと喉を鳴らしてもう一度紫煙を燻らせた。
そのまま二人とも言葉を発することなく外の喧騒だけが部屋の中に響く。
ゆっくりと手通りのよい黒髪を梳くと、黙っていた晋助が再び口を開いた。

「まぁ、親父にテメェを触られるのが嫌だったってのも一つの理由だが‥・、それだけじゃねぇ」
「‥・なんだよ‥・」

嫌な予感がして十四郎は晋助から離れようと腕を突っ張る。
けれど簡単に押さえ込まれてさらには耳たぶを甘噛みされ鼻から抜けるような声が漏れ出した。

「八年もありゃあコッチの方も熟れるだろうと思ってなァ?」
「ァッ‥・やめ‥・っ」

襦袢越しに足を撫でられそれだけでゾクリと背中が粟立っていく。

「晋助‥・っこれから宴があるんんだ‥・ッ今は、」
「クク‥・感じすぎて足腰が立たなくなるってかァ?そりゃ大変だ」

そう言いながらも体を辿る手が休まることはない。
キッとすぐ近くにある顔を睨みつけると眉間にできたシワを指先で撫でられた。

「せっかくの美人が台無しだぜェ?」
「テメェのせいだろうが!!」
「そうはしゃぐなや」
「はしゃいでねぇ!!」

どうしてこいつとはこんなにも会話が成り立たないのか。
十四郎は頭を抱えたくなった。
どうせこんな奴を構えるのは俺くらいしかいないだろう、と。

なんだかんだ言いながらも十四郎もまた晋助に惚れているのだ。

「とにかく!今はダメだ!宴が終わったら好きにさせてやるから」
「ほぅ‥・?今の言葉忘れんじゃねぇぞ?」

ゆったりと上げられた口角に早まったかと内心口を引き結ぶ。
けれど表には出さずに十四郎もまた対抗するように妖美に弧を描いてみせた。

「これが最初でおしまいのお仕事でありんすぇ。可愛がってくんなまし」



-END-



あとがき

リクエストありがとうございました!
いつもと違う花魁ネタにしたいと思い、今回はこのような形で落ち着きました。
男らしく仕事をこなす土方も好きですけど、たまにはこうやって無垢なままって言うのもいいかなと。

返品や書き直し承りますのでお申し付けくださいませ!
これからも匡兎もろとも黒に熔けるをよろしくお願い致します。




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