広い背中


(六代目拍手)


どうしてか分からないけれど、無性に泣きたくなった。
昼間で、街中で、人目が絶えないというのに。
鼻の奥がツンとして、あっ、と思った時には既に遅く、ボロボロとそれは溢れ出す。
慌てて俯いたけれど、引っ切り無しに零れるそれは次々と地面を濡らした。
あぁ情けない。
一体なにが悲しくて泣いているのだ自分は。
動くに動けなくて、その場で色を変えていく地面を拳を握りしめながらジッと見つめていた。
と、そこにふっと影が差す。
「こっちこい」
顔を上げる前に強い力に引っ張られてよろけるようにして足を動かした。
腫れぼったくなった目をよろよろとあげれば、視線の先には広く逞しい背中。
ぎゅう、と心臓が縮こまったような気がした。
いつだってそうだ。
日頃バカばっかりしてるくせに、こういう時は誰よりも先に手を握ってくれる。
「こんど、さん」
「泣きたい時は泣けばいいさ。だが、他のやつらにお前のそんな可愛い顔を見せるのは憚られるなぁ」
ははっ、といつものからりとした笑い声が聞こえて、きゅっと握り締められた腕に力が篭った。


END

初めての近土





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