オレンジに染まる街中をみてあぁ今日はハロウィンか、とトシは納得する。
二十歳をすぎて何年が経つのだろうかという自分がこんな些細なイベントを気にするのも変な気がするが、可愛い弟のことを思えばまぁ別にいいかとつい思ってしまうあたり、やはり自分は甘いようだ。
「今日はかぼちゃ料理だな。あ、後は菓子も買って帰らねぇと」
きっと弟だけではなく、銀八の弟も家に入り浸っていることだろう。
下手すれば十四郎は何かの仮装をさせられているかもしれない。
玄関を開けた時、中からひょっこり除くまど幼い顔二つを思い浮かべてふふ、と口元を緩めた。

***


両手に袋を下げたまま、カバンの中をゴソゴソと漁って鍵を取り出す。
すると僅かなその音を聞きつけたらしい中の人物がバタバタと動き回る物音を聞きつけて、またくすりと笑った。
わざと鍵を開けず暫く扉の前で待っていれば、想像通りに扉が勢いよく開かれる。

「「トリックオアトリート!」」
中から飛び出してきたのはこれまた想像通りの両頬にペイントをした十四郎と銀時だった。

「相変わらず元気なこった」

菓子を寄越せと両手を差し出してくる二人の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「ちょ、兄ちゃんっ髪!ってかお菓子!」
「天パ!!天パが!!トシさん酷い!」
「うるせぇな、直ぐに菓子作ってやるから待ってろって。どうせ銀八も来るんだろ?」

二人にビニール袋を押し付けて家の中へ入ると、あー、疲れた、とため息をこぼしながら靴を脱ぐ。
二人は顔を見合わせていつの間にかリビングへと消えていったトシの後を慌てて追いかけた。

「にしてもそれよくできてるな」

ジッ、と十四郎の頬を眺めてすげぇな、と感嘆の息を漏らす。

「これくらい簡単。トシさんもやったげようか?」

もさもさと口を動かしながらどう?と勧められるのをいや遠慮する、とコーヒーを啜った。
十四郎の頬には白いお化けとその下に墓地らしきイラスト、反対側にはオレンジ色のジャコランタンが描かれている。銀時の頬にも同じようになっていて、二人並べば左右対称に絵柄が並ぶ。

「みてみて、十四郎とほっぺくっつけたら一つの絵になるんだぜ?」

ほら、と十四郎の頭を寄せて銀時は自分の頬と十四郎の頬をくっつける。
気恥ずかしそうに目を伏せた十四郎に可愛いなぁだなんて相変わらずなことを思いながら、確かにこれは可愛いかもしれないと納得した。

「トシさんも、ね?ほら、別に兄ちゃんとほっぺくっつけろなんて言わないから」
「あ、そうだ!じゃあ兄ちゃんも銀とおんなじようにすりゃあいいんだよ。だったら俺と
 ほっぺくっつければ一つの絵ができるだろ?」

名案だろ?と顔を輝かされては、自他共に認めるブラコンであるトシに断る術もなく。

「…じゃあ片方だけ、」

結局折れることになり、嬉々として銀時が道具の入ったカバンを取りに行った。


今日はハロウィンだから銀時はこっちかな、と銀八はトシの家に直行した。したのはいいのだがチャイムに出たのは他ならぬ自分の弟銀時で、玄関の鍵を開けてたのも銀時だった。
用心深いトシにしては珍しいと思ったが手が離せないのかもしれないと思い慣れた動作で土方家の中を銀時と一緒に進んでいく。
リビングの扉を開けようとしたところでぐぃ、と服の裾を引かれてどうしたのかと動きを止めた。

「なんだ?」
「兄ちゃん、今日はなんの日か知ってる?」

突然真顔でそんなことを聞き出すものだから、一体どれだけがめついのかと目を細める。
するとその意を汲み取った銀時が菓子を出せってことじゃなくて、と小さくため息をついた。

「まぁ、なんの日かわかってるんならいいよ。はい、ってことで!」
「あ?一体なんだって…」
「「トリックオアトリート!」」

※※※

土方兄弟まじ天使かわいい…
でもそれ表現できない辛い。
この後ちゃっかり銀八もペイントされて四人でほっぺひっつけた写真とります。





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