回想浪漫



現代パロ:銀土







「あの時のトシは可愛かった」

デレッとした顔で朝飯をつつく銀時に土方はまたかとげんなりする。

「もういい加減タコができる。」

「だってさぁだってさぁ?」

かぁわいくてしょうがないんだもん、と土方のげんなり感に気づかずにもう何十回と聞いた回想を語りだした。


話は土方たちの馴れ初めに遡る。
デスクワークによる運動不足解消とほどよい筋肉を保つために土方が行き始めたジムで銀時はインストラクターのバイトをしていて、たまたまトレーニングしていた土方に銀時が話かけたことがきっかけだ。

「背筋綺麗だねって俺が言ったときのあの笑った顔が!!可愛くて可愛くて俺はもう死ぬんじゃねぇかと思ったね」

「そのまま死んでくれてよかったのに」

「またまたぁ、死んだら死んだで泣くくせにぃ」

「誰が泣くか」

チッと土方はあからさまに舌を打つと、冷めかけているコンソメスープを啜る。

まぁ確かに、なかなか筋肉が付かない体質で体を誉められたことがなかったから嬉しくてしょうがなかったのは本当のことだし、俺もその時のことは鮮明に覚えているけれども、と一人胸の中で呟く。

けれども何十回、いやもう何百回と言い直してもいいほど同じ回想を聞かされればうんざりもしてくるし、それどころかじゃあ今の俺は可愛くないのか不満なのかと問いただしたくなる衝動がふつふつと沸き上がってくる始末なので。

変なことを口走る前にこの減らず口をふさいでやろうと土方は結論づけて立ち上がった。

「なぁ、ぎん。今の俺は可愛くないのか?」

足を進めて向かいに座る銀時の横にたつと、そのまま狭い隙間に無理やり身をねじ込ませて膝の上に座る。
そして上目遣いに見上げてやればほらこの通り。

「か、可愛くないわけねぇだろぅがぁああ!!!」

ぎゅむりと抱きしめられてそのままわしわしと犬を撫でるみたいに髪を掻き混ぜられて顔中に口づけられる。

痛い、離せ、気色悪いと暴言を吐きながらも、今しがた発せられた言葉を脳内でリピートさせてこっそりほくそ笑んだ。



-END-




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